2004年10月のレビュー

 

 2004年10月30日(土)  負けず嫌いな僕ら

  キルシェノベルズ  渡海奈穂:作  富士山ひょうた:絵

渡海先生の久しぶりの新刊は、ライバルもののお話です。高校の陸上競技大会で出会ったライバル同士が最初はとんでもなく反目しつつ、いつかそれが恋に…というある意味王道パターンな(笑)作品。主人公は美術部と陸上部を掛け持ちしている高校生の赤堀。陸上部の合同合宿で顔をあわせたのはインターハイ常連の西崎。彼は、掛け持ちしていることが気に入らないのかことあるごとにつっかかってきて喧嘩になることが多いのに、なんと合宿では同室になってしまって…。

ライバル関係というのが「結局のところ相手を認めあっているからこそのライバル」ということなんだなとしみじみ。最初は腹立たしいだけだったはずなのに、段々とその感情が変化していくあたりは「若いっていいなあ(笑)」と思いつつ、少々気恥ずかしさも感じつつ、楽しく読みました。ひょうた先生のイラストがとてもイメージ通りで、かっこいいです。

私的評価 ☆☆☆☆
(ライバルもの好きな方はぜひぜひ(笑) こういうテンポが良くて楽しい作品は好きです。赤堀の絵がどんな絵だったのか、ちょっと見てみたいなあ〜。)

 

 2004年10月30日(土)  ロマンスのレシピ

  リンクスロマンス  真先ゆみ:作  笹生コーイチ:絵

ワンダーガーデンシリーズの2作目になります。前々作で出てきたピアニストのキャラの年の離れた弟が主人公のお話です。2000年に小説エクリプスに掲載されたお話とその続編書き下ろし、それから全く別の兄弟もののお話が収録されています。雑誌掲載が意外と早かったところを見ると、ひょっとしたらこれのほうがノベルズより早く出来上がったものなのかな?(^^; 高校生の有樹はどうしてもバイトに雇って欲しいとティーハウスに通い詰め、なんとか夏休みだけはとOKを貰いました。実は1年前の出会いで、有樹はティーハウスのマスターに恋心を抱いていて…。

そういえば読んだ事がある気がする…(笑)<小説エクリプス という今さらながらな記憶を引っぱりだしつつ。お相手が年の差のあるオヤジキャラということもあり、もどかしさ半分、せつなさ半分という感じのほのぼのしたお話でした。一生懸命なのにどうも手のひらでころがされてる感じの主人公ですが、頑張って2人で幸せにティーハウスを営んでいってほしいものです。

私的評価 ☆☆☆★
(書き下ろしのラスト部分では、随分大人げない(笑)マスターがいて、あまりの変貌ぶりに笑えます。まあ、素直になったと思えば…(笑))

 

 2004年10月25日(月)  恋愛映画のように、は

  ウィングスコミックス  山田睦月:作画  菅野彰:原作

雑誌ウィングスと、小説ウィングスにそれぞれ掲載された、菅野先生の原作によるコミックスです。山田先生とはそれまでに文庫の挿し絵などでコンビ(?)は組まれていますが、文庫のコミックス化ではなく原作提供での作品とのこと。表題作はいとこどうしの平凡な恋愛を、もう1作品「夏の声」は学校を舞台にしたお話が描かれています。

菅野先生といえば、やはりどこか「満たされない何か」を感じる作品が多いのですが、やはりこの作品のどちらもそのイメージを色濃く感じます。ギャグを交えつつ、非常にシリアスなシーンが数多くあるのですが、そのシーンを山田先生がさらりと描いていて、胸に響きます。山田先生の作品はあまり目にしていないのですが、とても素敵で他の作品も読んでみようかなと思ったり(笑)心に切なく響く、作品でした。

私的評価 ☆☆☆☆★
(あとがきを見ると、とても相思相愛なコンビでいらっしゃったようです。そういう思いもあったからこそ、よりイイ作品になっているのかも。菅野先生好きならぜひ!読んで欲しいです。)

 

 2004年10月25日(月)  凛!−RIN− 3

  キャラコミックス  穂波ゆきね:作画  神奈木智:原作

弓道を題材にした人気シリーズの最終巻になります。雑誌で連載した第2部の最終話と番外編である前後編の合計3作品が収録されています。兄の大和、恋人の草という偉大な(?)先輩達が抜け、新生弓道部として部長の桜沢を助け頑張る桂ですが、後輩から「認めない」ときつい言葉を受け、思い悩む日々が続きます。そんな中、合宿が始まり、トラブルが絶えずに思い悩む桂ですが…。

思いきったら誰より強かったなという印象の桂。迷いのなくなった表情はなかなかキリッとしていてかっこいいです(^^) まわりのほうがじたばたしてしまってるかもしれないですね。自信たっぷりに見えてかなり嫉妬深い草が可愛く見えてしまいます(笑) そういえばこの作品、本来なら第2部は2巻で完結予定だったようですが、作画の関係でもう1話増えたようで、読者にしてみると番外編も読めてラッキーだったのかも?雑誌掲載は全て既読だったのですが、楽しく読めました。

私的評価 ☆☆☆☆
(ドラマCDも発売されます(…した?(^^;)が、果して弓道のシーンがどういう風になるのか、ちょっと聞いてみたいかも。黙々と自分の弓を引く、というシーンだと、多分無言ですよねえ(笑)ラジオなら放送事故だな(^^;)

 

 2004年10月15日(金)  コードネームはBee

  ビーボーイノベルズ  磯崎なお:作  松本テマリ:絵

小説b-Boyに掲載された表題作と、その続編書き下ろしが収録されています。年の差もののお話です。主人公はごくふつうの高校生。親友が会員制の出会い系サイトを開いており、その影で恋愛に関するトラブルを解決するトラブルバスターとして活躍をしていました。それまで解決率100%を誇る彼のもとに次なる依頼が持ち込まれます。それはモテモテの大学生になんとかして振られる気持ちを教えてやってほしいと言うもので、早速ターゲットに近付く主人公ですが…。

えー、ネタバレながら(笑)結局大学生どころかかなり年くってたわけですが<相手>ふつう見たら判るだろう!と突っ込むのはダメでしょうか(笑)いくらなんでも判るよ、その年の差は(^^;…ただ、まあ、主人公がお子さまだということを考えるとしょうがないんだろうなあ(笑)お話としては謎の部分がないこともあって、書き下ろしの方が面白かった気がします。…まあ、ネタはおたくチックだったんですが(笑)これからもどたばたしながらいろんな事件に巻き込まれつつ(笑)がんばるんだろうなあと、余韻もある作品でした。こういう話、元気で好きです。

私的評価 ☆☆☆★
(テマリ先生のイラストは確かに年齢不詳的というか(笑)若々しいので年の差があるイメージはあんまりないかも。カッコよすぎという話もありますが(笑))

 

 2004年10月15日(金)  業務命令は「駆け落ち」

  ビーボーイノベルズ  夢乃咲実:作  祭河ななを:絵

全編書き下ろしの新刊です。一応サラリーマンものになるのかな?タイトル通りに「駆け落ち」ネタものでもあります。主人公は、天涯孤独で地味に暮らす会社員。中小企業につとめて真面目に働いていましたが、ある日いきなり辞令がおりて、親会社のしかも秘書室へ異動することになります。面喰らいつつ辞令に従った主人公が、親会社で出された勤務内容とはなんと跡継ぎの御曹子と共に駆け落ちしろというとんでもないもので…。

とんでもない設定ならこの人、というイメージが密かにあるんですが(笑)今回も期待に違わず、トンデモ設定でした…(笑)跡取りを巡ってここまで大騒ぎになる会社ってどうよ、と思いつつ(^^; (いくら大企業だろうがちょっといやかも)しかもそれを回避するネタもネタだし(笑)主人公が健気だったのでまだ読めたんですが、何度も読もうとは思わないなあ…(^^;

私的評価 ☆☆★
(なんとなくやり過ぎ感がある気がする(^^; もうちょっと現実味があっても全然平気なんですが、あまりにファンタジー(笑)すぎたかなと。)

 

 2004年10月15日(金)  嘘と真実と恋の味

  リーフノベルズ   高槻かのこ:作  祭河ななを:絵

以前にリーフノベルズで出ていた「たおやかに恋は香る」で出てきた商業デザイナーの脇キャラが主役になって登場しました。とはいえ、視点が主にお相手キャラなので全く別のお話として読んでも大丈夫です。主人公は美大に通うデザイナー志望の青年。わりと穏やかなタイプです。ある日尊敬している商業デザイナーでもある大学の講師にからかわれ、はずみで花瓶を倒し怪我をさせてしまいます。怪我をしている間だけでもと手伝いを申し出た主人公ですが…。

正直なところ、前作での商業デザイナーの印象が全くなく(^^; どんなキャラだったっけかなと一生懸命思い出しつつ(しかも結局思い出せなかった(笑))読みました。主人公の美大生がけっこうしっかりしていて見ていてとても和めます。それというのも困った兄キャラがいるからという話もあるんですが(笑)この兄キャラ、天然にもほどがあると思いつつ、確かにちょっとウザいかもしれん…(笑)主人公の親友やデザイナーの友人など個性的なキャラに囲まれ、なんだか商業デザイナーのほうが影が薄いかもしれないという(笑)そんなお話でした。ほのぼのした感じの作品です。

私的評価 ☆☆☆
(あとがきで主人公の友人同士のカップリングの話がちらりと出ていましたが、そのカップリング、ぜひとも推奨いたしたく!(笑) どうやってたらしこむ(おい)のか気になるです。)

 

 2004年10月08日(金)  水槽の中、熱帯魚は恋をする

   ディアプラス文庫   うえだ真由:作  後藤星:絵

びっくりなことに、今月はじめての本でした…(^^; 信じられん…(笑)えー、雑誌小説ディアプラスに掲載された作品と、お相手視点からの続編書き下ろしが収録されています。主人公は、バイトにせいを出す勤労大学生。車の運転の練習をしている最中に、あやまってBMWにあたってしまい、扉に傷をつけてしまいます。そのBMWの持ち主は、大学でも有名なクール系の美貌をもつ同級生。分割でも返すという主人公に、交換条件として「熱帯魚の面倒を見て欲しい」と言い出しますが…。

とてもとても穏やかなお話でした。最初はジレンマに陥りつつ、相手の心にアタックをかける(笑)主人公が健気で可愛くて、続編書き下ろしでは攻キャラ視点ですがこれがまたすごくラブラブで(笑)なんだか幸せ気分になれる作品でした。後藤先生のイラストもとても綺麗です。そしてヘタレ攻チェックに引っ掛かりまくりそうな(笑)攻キャラもオススメ度高いです(笑)なんだかすごく続きが読みたくなった、そんな作品でした。

私的評価 ☆☆☆☆
(リアルなアロワナのイラストもとてもぴったりで神秘的な感じでよかったです。)