2004年9月のレビュー

 

 2004年09月30日(木)  夕闇をまたずに

   リンクスロマンス  坂井朱生:作  緒田涼歌:絵

雑誌リンクスに前後編で掲載された作品と、短編の書き下ろしが収録されています。恋人の青年と死別してしまった大学生の主人公は、まだその事実を受け入れられずにぼんやりと日々を過ごしています。そんな彼が大学のサークルで偶然であったのが、死別した恋人に良く似た男性。その男性はバイトを探しており、主人公は先輩の陰謀もあってそのバイトをやらされる羽目に陥りますが…。

主人公は死別した恋人に対して思いがなさ過ぎるんだと思い込み、不眠にまで陥ってしまってるんですが、これほんとに逆だなあと。想いが強いからこそどうしても受け入れられないんですよねえ。その想いがすごく良くわかって、すっかり主人公にシンクロしてしまいました(^^; ちゃんと泣けて、よかったなあと最後にしみじみ。こういう気分を乗り越えたからこそ、書き下ろしのバカップル的ラブラブさ加減も倍楽しめます(笑)

私的評価 ☆☆☆☆
(綺麗な緒田先生のイラストで色っぽさも倍増です。少々メガネフェチぎみなので、攻のメガネがかっこよくて萌え〜(笑))

 

 2004年09月30日(木)  ステイ・ノート

   リンクスロマンス  火崎勇:作  佐々木久美子:絵

雑誌小説リンクスに掲載された表題作と、続編書き下ろしが収録されています。火事にあい、記憶の一部を失ってしまったサラリーマンのお話です。主人公は普通のサラリーマン…のはずがなぜか銀座のホテルの火災に巻き込まれ、目が覚めた時には病院のベッドの上にいました。しかもここ1年ぐらいの記憶が虫食い状態。覚えていることも多いのに、どうしても思い出せないなにかをもちながら、通常の生活に戻ってきた主人公ですが…。

雑誌掲載の時に、けっこう気に入っていた作品で、続編も楽しみにしていた…んですが、ちょっと続編のネタは好みから外れていて残念だったかな(^^; 記憶喪失ものといえば定番な気もしますが、記憶喪失に至る部分や思い出すきっかけなんかがけっこう個人的にしんどいシーンで、読んでいてちょっとハードな作品でした。もうちょっと軽い作品だと読みやすかったかなあ。気分的にあまり重い作品を読めない状態だったので…。

私的評価 ☆☆☆
(まあ、その時のコンディションにもよるんですが、基本的には読みごたえがあるとは思います。シリアスなだけにちょっとしんどかったかな(^^;)

 

 2004年09月30日(木)  想いは遥かなる茶都へ 彩雲国物語

   ビーンズ文庫   雪乃紗衣:作  由羅カイリ:絵

このところの私的最大ヒット(笑)な「彩雲国」シリーズですが、今回は舞台を赴任先の茶州に変え、茶州へ赴いた面々が主体でお話が流れて行きます。主人公の秀麗及び状元(一位)及第の影月は共に茶州の長として任命され、任地へと向かいます。特別に静蘭という武官も伴い危険な旅路についた彼らは、思っていた以上の歓待(笑)をうけ、秀麗を残し他の同行者は全員捕らえられてしまいます。1人になってしまった秀麗は、それでも自分でできることを為そうと、行動を起こしますが…。

えー、ヘタレ王様大好きな私にとっては非常に!辛い1冊になってしまいました…(T_T)いや、お話自体はすごく面白かったんですよ。でも王様が…登場は少ないわ、秀麗はよこから出てきた困った坊ちゃんキャラ(…って言えるほど一筋縄ではいかないけど(^^;)に心よろめくわ、あんなやつにやるくらいなら!と静蘭まで出てくるわ、もう王様の入る隙がない〜(T_T) それでも、全てを彼らに任せ、じっと待つだけの度量ができてきた王様は立派だと思います(…やっぱりお気に入りキャラ贔屓ですね(笑))次も茶州でのお話になるようですが、秀麗ならではの鮮やかな手並みを拝見したいものです。

私的評価 ☆☆☆☆★
(…そしてぜひあの困った坊やをなんとかしてくれえ…。王様の天敵だよなあ…としみじみ。この2人顔をあわせたらどうなることやら。王様は床にのの字書いてしまいそうな気がします(笑))

 

 2004年09月30日(木)  目を閉じればいつかの海

   ルビー文庫  崎谷はるひ:作  おおや和美:絵

崎谷先生の新シリーズは、湘南を舞台にした再会恋愛ものです。主人公は湘南にあるバーの雇われ店長。実は10年前に恋人だった男性が就職と同時に見合い、海外赴任の予定があると聞かされ、自分から別れを告げて辛い思いを経験していて、それ以降できるだけ元カレと関わりのあるところとの連絡を断ち、過ごしてきました。個性的なバイトメンバーに囲まれて穏やかに過ごしていた彼の店に、偶然昔の恋人があらわれて…。

まずなによりおおや先生の絵というのにびっくり。ルビーでおおや先生といえばタクミ君シリーズだったので(^^; まあ、全然違う系統だからこそ重ならず違和感もなかったのかなと思いますが、思っていたよりもすんなり小説と融合していて、新鮮でした。そしてお話自体も、濡れ場シーンだけは相変わらずでしたが(^^; イラスト効果もあってかとても爽やかな印象で、バカップルなんだけどなんだかホッとしたというか、読み終えたあと「よかったなあ〜」としみじみ思ってしまったのでした(笑)

私的評価 ☆☆☆★
(どうやら、バイトのメンバーでもう1組カップルができるような気配で(笑)続きも出るようです。楽しみだなあ〜。。)

 

 2004年09月30日(火)  その胸元を吐息で濡らし…

   シャレード文庫   麻生玲子:作  富士山ひょうた:絵

以前ゲンキノベルズで出ていた「眠る体温」の別キャラが主人公のお話です。主人公は人気スポットになっているバーでバイトをしている大学生。穏やかで話し上手な彼は、自分の気に入ったものにはとても愛着を持っていて大人なキャラです。そんな彼が店で出会ったのは、真面目なサラリーマン。最初は普通にバーの店員と店の客というスタンスでいた彼らですが、だんだんと距離が縮まってきて…。

焦れったいような2人の距離の取り方が、逆に新鮮です。しっかり者で世話好きな年下の男が年上美人を落とすという(笑)言わば典型の年下攻という気もしますが、でも読んでいてとても和むというか、穏やかな作品でした。ラストでは大学生の意外なバックグラウンドにびっくり。…っていうか、ほんとこのシーン以外では必要ないバックグラウンドだった気もしますが(^^; でもだからこそこのシーン以降の彼らがどうなっているのか、楽しみで想像してしまったりして(笑) 憎い演出ですね。

私的評価 ☆☆☆☆
(とても「大人」な感じのお話です。ゆったり穏やかに流れる空気が心地いい作品でした。)

 

 2004年09月28日(火)  結婚狂騒曲 <第2楽章>

   シャレード文庫   魔鬼砂夜花:作  暮越咲耶:絵

長く続いた人気シリーズ「アクト&メイド」のシリーズの最終巻になります。とんでもないゴミ屋敷の主だった超絶美形の俳優となぜか恋仲になってしまった普通の高校生で家政夫のお話という、スタートからかなり奇想天外な感じだったんですが、最後まで勢い良くつっぱしってくれたという感じのラストになりました。武彰の妹舞香と稔の担任田村のカップルの結婚式を廻ってのトラブルはますます最高潮。とうとうキレてしまった舞香を押さえる術を模索するべく必死に行動する稔ですが…。

何がすごいって、最初から最後まで、このハイテンション保ち続けたのがすごい(笑)と思います。心から同情をしてしまいそうな稔の境遇ですが、この巻にいたってはだんだんただの痴話喧嘩に思えてきて(笑)まあ、これも恋愛の1つのあり方なのかもなと思いつつ。さすがにこれだけ巻数重ねたら、稔も操縦方法を心得てますね。逆に武彰の方は学習してないんですが…(笑) 書き下ろしも短いですがラブラブで、楽しかったです。

私的評価 ☆☆☆
(雑誌でほとんど読んでいたので、新鮮味はないんですが、今の連載作品よりはお気に入りなので、やはりちゃんと文庫で最後まで読めて嬉しかったです(^^))

 

 2004年09月28日(火)  夜空に月、我等にツキ

   シャレード文庫   椹野道流:作  唯月一:絵

雑誌シャレードに前後編で掲載された表題作と、書き下ろしが収録されています。相変わらずのラブラブっぷりを発揮するメス花キャラたちですが、今回は里帰り編。前回のカミングアウト編(笑)で篤臣の実家に帰った彼らは、今度は大阪の江南の実家でお正月を過ごすことになり、アメリカから帰ってきます。しかしやっぱり一度勘当を言い渡されただけあって、すんなり和気あいあいとはいかなくて…。

ヘタレなわりに強引なところのある江南ですが、今回は実家が舞台ということもあってかヘタレ度倍増(笑)すっかりいいところは篤臣に持って行かれている気がします。そして巻を重ねるごとにどんどんしっかりものの奥さんになっていっている(笑)篤臣も頑張ってて可愛いなあと(笑) とりあえず、江南ママからあの写真を貰ってきただけでも「でかした!」(笑)な気分でした。いや、その写真、ぜひとも絵で見てみたい…(大笑)

私的評価 ☆☆☆★
(いろいろネタ満載な青春時代だったんだなあ…(笑)<江南>シリアスキャラだとばかり思ってたんだけど(^^; )

 

 2004年09月28日(火)  征服者の特権

   キャラ文庫   神奈木智:作   明森びびか:絵

神奈木先生の新刊は、全編書き下ろしの作品です。暴力団の抗争を舞台にしたかなり分厚い本で、読みごたえたっぷりですね。主人公は、暴力団の跡目争いに巻き込まれ、3年前に死んだはずの跡取り息子。生きていることをひた隠しにし、復讐だけを胸に現若頭の幼馴染みと共に行動を起こします。その彼らの前に立ちはだかったのは仇である組の弁護士をしている美貌の青年で…。

神奈木先生といえばほのぼのした系統というイメージだったので、随分ハードなお話でびっくりしました。でもやっぱり神奈木先生らしいというか、とてもキャラクターたちが一途で、同じハードなお話でもどこかそれだけではない印象の作品になっていました。磁石が引き合うかのように惹かれあう2人の雰囲気がいい感じで、この後の2人のお話なんかも読んでみたい気がします。

私的評価 ☆☆☆★
(読みごたえの反面、しんどいのもしんどかったです。久しぶりに文庫で読むのに時間がかかった気がする。私個人的には、神奈木さんはほのぼの系でお願いしたいです…(笑))

 

 2004年09月28日(火)  虜 −とりこ−

   キャラ文庫  秀香穂里:作  山田ユギ:絵

全編書き下ろしのマトリ(麻薬取締官)のお話です。主人公はクールな美貌をもつ麻薬取締官。先輩と組んでかなりの検挙率を誇る彼には、実はつらい過去があり、そのせいもあって麻薬というものを憎み一掃することに執念を燃やしています。その彼は、ある事件を追って辿り着いた街の一角に、不思議な雰囲気の喫茶店を見つけます。情報をとろうとその店に入った主人公。店番の青年と、だんだんと親しくなりますが…。

最初はすっかり先輩とのラブラブかと思っていたんですが、全然違うところにいってしまいましたね(笑) いや、多分先輩とだと話の重厚さが全く違ったと思うので、この方が断然いいんですが。店番の青年の過去やバックグラウンドもなかなかハードで、読み終えるとけっこう疲れました。厚さがあるわけではないんですが、ちょっとしんどいテーマだったのかなあと思います。悪役があまりにちゃんと悪役だからなあ(^^;

私的評価 ☆☆☆
(山田ユギ先生のイラストの口絵がどちらも色っぽくて素敵でした。…でも笹生のおやじっぷりにはちょっと(^^; こんなオヤジいそうだもんなあ…(笑))

 

 2004年09月25日(土)  おとなげ

   キャラコミックス    雁川せゆ:絵

久しぶりの雁川先生のコミックスです。雑誌キャラセレクションなどに掲載されていたインテリアプランナーのシリーズと、書き下ろしが収録されています。主人公は、インテリアプランナーとして活躍をはじめた青年。実は彼は事務所の社長…つまり上司にあたる人物と2年もの間関係を続けています。社長は妻帯者で、割り切った身体だけの関係と思っていた主人公。しかしその我慢も限界に達するような仕事が舞い込んできて…。

いちおう雑誌掲載の分は全部読んでいますが、一番面白かったのはくっついてからのお話かも。ちょっとコメディちっくというか、シリアスな中にコミカルな絵が混じってて、楽しかったです。まあ、不倫というのは実際にはどうだろう(^^; とは思うんですが、普通に夫婦なのではなく、ある意味ドライな夫婦だったから、その辺の嫌悪感はあまりなかったですね。いつになくハイテンションなあとがきにも思わず笑いも(苦笑) でも私もコドモ編ということで浅井&江藤の高校時代見てみたいかもです。

私的評価 ☆☆☆★
(ラプラスの天使とかとくらべると断然コミカル(笑) 勢いで笑ってしまいます。けっこう好きなシリーズだったので、楽しませてもらいました。)

 

 2004年09月24日(金)  ばらいろすみれいろ

    ウィングスコミックス   あとり硅子:絵

先々月突然飛び込んできた訃報に涙が止まらなかったのは記憶にまだ新しいのですが…、追悼のラストコミックスが、発売になりました。商業誌未発表作品を含む、短編8編が収録されています。未発表作品以外はすべて雑誌ウィングスに掲載されたもので、表題作のお話は、妙にいろんな人から危険なほどにもてまくる体質の少年のお話です。

雑誌ウィングスは購入していないので、半分以上が初めて読む作品でした。じっくり読んで、やっぱりなんだか涙がじわっとわいてしまいました…。すべての作品にどこか共通の不思議な世界観があって、とてもとても大切ななにかがそこにちりばめられている気がします。読んでいてもとても和む作品ばかりで、だからこそ泣けてくる(T_T) もう、新しい作品には2度と巡り合えないという事実に、まだ正面からは向き合えないです(T_T) でも、このコミックスをはじめとした全ての作品を、大切に持っていて、折に触れ読んでは癒されたいなと思うのでした。あとり先生の御冥福を、心よりお祈り申し上げます。

私的評価 ☆☆☆☆☆
(同時発売で、イラスト集も発売になっています。貴重な初期の挿し絵イラストも全て収録されています。そして私の「初あとり先生イラスト」は「アクセスの森」だったことにいまさらながら気がつきました…(^^;)

 

 2004年09月17日(金)  宵山恋歌

   花丸文庫   小川いら:作   椎名咲月:絵

京都を舞台にした全編書き下ろしのお話です。主人公は老舗の道具屋の跡取りの養子の少年。日本画を描いており、自分で進路やあとを継ぐ問題を心悩みつつ日々を過ごしています。そんなとき、店に客としてやってきたのが東京の青年実業家の青年。父親に言われて青年の京都案内をすることになった主人公。だんだんと会う回数を重ねるごとに優しい青年の気持ちに触れ、惹かれて行きますが…。

京都が舞台ということで、お相手の青年実業家以外は全員関西弁…ていうか京都弁ですが、あんまり違和感はなく、ほのぼのした感じで終始お話が進んでいくのでなんだかのんびりと楽しめました。一途でかわいらしい主人公がひよこのインプリンティングのごとく一生懸命に青年実業家に思いを寄せるのがカワイイと言うか(笑)天然一途キャラもそう言えば好みだったな私…。非常に穏やかな作品でした。劇的さはないけど、ゆったり楽しめる作品でした。

私的評価 ☆☆☆★
(イラストの椎名先生の絵もとてもイメージにぴったりです。姉2人にいぢられる主人公の絵が一番ツボかも(笑))

 

 2004年09月16日(木)  梨園の貴公子

   ビーボーイノベルズ  ふゆの仁子:作  円陣闇丸:絵

ふゆの先生の書き下ろしの新刊は、タイトルを見てもわかる通り、「歌舞伎の世界」が舞台のお話です。主人公は若手のカメラマンの青年。フリーで活動しながらカリスマ的存在にまでなっている彼が手掛けることになったある歌舞伎役者の写真集の仕事をキャンセルし、その分「別の役者の写真を撮ってほしい」といわれ、猛反発をします。その「別の役者」とは歌舞伎界の名門の御曹子で、主人公に直接さまざまなアプローチをしかけて写真集の仕事を承諾させようとしますが…。

派手でなんとも印象的な表紙です。思わずあまりに悪そうな(笑)歌舞伎役者のイラストに目が惹かれます。さすが円陣先生ですよねえ〜。これだけでもう掴みはOKというか、作品の描写が少々説明くさくともしっかりイラストでカバーできちゃってる気がする。そのせいもあってか、すごく読みやすく(笑)堪能できました。キャラクターも魅力的で、私は大人なようで子供な(笑)歌舞伎役者のファンになってしまいそうです。これから、彼は主人公の元でいろんな時間を取り戻して行くのかもしれませんね。

私的評価 ☆☆☆☆
(本当に華やかさ満載のお話でした。くっつくまでだけじゃなくて、これからの2人の生活もちょっと見てみたいかも。)

 

 2004年09月16日(木)  まなざしの誘惑

   ビーボーイノベルズ  遠野春日:作  蓮川愛:絵

小説b-Boyに掲載された表題作と続編書き下ろしが収録されています。以前ビーボーイノベルズにて発売された「じれったい口唇」の別キャラのお話になります。少しだけ世界観が被るので、両方御存じの方がより楽しめるかと思います。主人公の聖は大学生。議員の息子でありながら、出張ホストのアルバイトなんてものをやっています。それは金のためではなく、父の秘書であり以前は家庭教師でもあった青年大成の気持ちを知りたいがための行動で…。

少々ボンボンキャラということで(笑)考えなしなところのある主人公ですが、一途で可愛いのは可愛いかな。…っていうかやっぱり会話が足りないよなあ、この2人…(笑)続編では2人の関係を探ろうとする怪しい人物が出没しますが、これもまたお決まりのごとくピンチに追い込まれて、お決まりのごとくさっそうと助けがあらわれるという(笑)まるで水戸黄門(大笑)を見ているような展開でした。まあ、これもカタルシスかしら…(笑) 華やかな蓮川先生のイラストがとても素敵でした。

私的評価 ☆☆☆
(好みでいえば、「じれったい口唇」のカップルの方が好きなんですが、でもやっぱりどっちも会話が足りないよねえ(^^;)

 

 2004年09月16日(木)  恋愛ドルチェミスト

   ビーボーイノベルズ  岩本薫:作  祐也:絵

小説b-Boyに掲載された、フードプランニング会社のお話が番外編(?)の書き下ろしの方を表題作にしてノベルズになりました。表題作ではフードプランニング会社の代表である兄と若き天才シェフとのお話、雑誌掲載分では会社の一員である弟と、昔陶芸家として名を馳せていた家具卸の会社の営業とのお話が描かれています。お話の流れとしては、時系列は雑誌掲載の方が先ですが、作品の長さは逆なので、どちらかというと表題作を読んでから、番外で脇キャラの作品を読んだような感じでした。

雑誌掲載のものをあまりはっきり覚えていなくて、だからこそ新鮮な気持ちで読めたのかなと思います。表題作の方はイタリア料理の名前がこれでもかというぐらいにふんだんに出てきて、メニューも沢山、描写も沢山(笑) なんだか読み終えてお腹がすいてきてしまいそうです。雑誌掲載のお話もほのぼのしていて和める作品でした。祐也先生のイラストも綺麗なんですが、なんだかシェフの顔だけ妙にきつく見えて違和感が(^^; そんなにごつくなくてもいいのになあと個人的に思いつつ(笑) 読んでいる時のイメージがもうちょっと線が細かったらしいです。

私的評価 ☆☆☆★
(お腹がすいている時はできるだけ避けて(笑)読む事をお勧めします。でないとお腹がなってしまいそうです(笑))

 

 2004年09月10日(金)  新装板 月の砂漠殺人事件(上・下)

   ダリア文庫   久能千明:作    蓮川愛:絵

GENKIノベルズから出ていた「月の砂漠殺人事件」が、内容はそのままに文庫になりました。イラストにも変更はなく、作者あとがきのみ文庫版に変わっています。…やっぱり買ってしまったなあと思いつつ…(笑)まあ、せっかくなので、レビューもしておこうかと思います。主人公はバスケ部員である瑞貴をはじめとした4人組。怪我をした林の療養をかねて、山奥の温泉地へ出かけることになった彼らは、訪れた先でとんでもない事件に巻き込まれますが…。

つい先月に最新刊を読んだあとなので、余計にこの最初を読み返すと「そうか、こういう流れでこうなったんだっけ」としみじみしてしまいました(笑) 最初にそういう雰囲気になるまでは、まるでギャグみたいな流れだったんだなあ…とか(笑)瑞貴の気持ちとか、夏彦の思いとか、いろいろじっくり読めば読む程、「一旦とはいえ終わりなのがもったいない!!」と思ってしまいます。なんとか、大学編とかで、続いてくれないものでしょうか…。

私的評価 ☆☆☆☆★
(CDにもなってるし、わりとこの作品は目にされてる方は多いと思いますが、こうして文庫化されることで、また多くの人の目に触れるのはいいことですよね(^^) そしてぜひとも「続編」の話が出て欲しいものです。)

 

 2004年09月10日(金)  大人になるための条件

   ダリア文庫   ふゆの仁子:作  あさとえいり:絵

ダリア文庫から、書き下ろしで新作登場です。今回は義兄弟もの、かな?主人公は大学受験を控えた高校生。早くに両親と死別し、年の離れた実姉とその夫と一緒に暮らしています。主人公が特に懐いているのが姉の夫の弟である、義理の兄。単なる憧れ以上の気持ちを抱いている主人公は、彼の勤めているバーでバイトをしながら、大学受験ではなく他の夢を叶えるため、秘密をもち続けていますが…。

今回久々に(笑)楽しめました〜。なぜだろう、かなりこのカップルがツボだったのですが、つらつらとなぜ楽しく読めたかを考えてみたら、あまり「うんちくネタがなかった」のが理由かもしれないと思い当たり、ひとしきりウケていた私…(^^; サラリーマンが主人公よりも、年齢低めの方が萌え要素強いのかもしれません。兄キャラもかっこ良かったし、子供っぽいとはいえ、一途な主人公も可愛かったし。しかもイラストがとっても色っぽくかっこよくて、萌え度倍増(笑)ちょっとお気に入りになってしまいました(笑)

私的評価 ☆☆☆☆
(ラストにあさと先生が無精髭な兄キャラの絵をちらりと描いていらっしゃるんですが、これがまたかっこよくて(笑)イラストの好みというのもお気に入りに拍車をかけてそうな気がします。)

 

 2004年09月10日(金)  バディ・システム

   アイスノベルズ   北川とも:作   深井結己:絵

なんとなく手にとって、あらすじを読んでみたらちょっと気になったので、予定外に購入(笑)ダイビングのお話です。ついついバディというと別のネタを思い出すんですが(笑)「バディ」というのはダイビングの時に組む相手をさすそうです。相棒、という意味なら納得ですね。主人公は、ダイビングショップの経営者の息子。以前はインストラクターをしていたが、ある事故をきっかけに、ダイビングができなくなっている。そんな彼の元に、ダイビングをはじめたいという男性がやってくる。無愛想で失礼なその男性は、ショップのインストラクターの青年の紹介でやってきたカメラマンで、なんと主人公がダイビングを教える羽目になってしまい…。

けっこういい年のおっさん(笑)と若者がぽんぽん喧嘩まがいに言い合うのがとてもテンポよくて(笑)段々二人の距離が縮まっていくようすや、主人公の葛藤、トラウマ克服への流れもとても自然で入って行きやすくて、すごくすんなり読む事ができました。ほのぼのした作品なので、読み終えてなんだかほわーんと柔和な気持ちになってしまったりして。おっさん好きの方はきっと楽しめると思う(笑)のでぜひとも試してみて下さい。

私的評価 ☆☆☆★
(あとがきが長かったらしくて、ちょっとだけショートストーリーが描かれています。その後の彼らも垣間見れて楽しいです(^^))

 

 2004年09月10日(金)  ディアスポラ 6

   ウィングス文庫   前田栄:作   金ひかる:絵

魔法と精霊のお話「ディアスポラ」の最終巻になります。小説ウィングスに掲載されたラストまでのお話と、その後を描いた書き下ろしが収録されていて、今までの文庫の倍近くの厚さがある、非常に読みごたえたっぷりな1冊になりました。前作で、精霊の正体などの真相をしったユリウス一行。なんとか精霊たちの切なる希望を叶えるべく、さまざまな策を練り、出発への準備を固めていく彼らですが…。

一応最後まで雑誌は読んだので、流れは知っていたのですが、今回書き下ろしの作品を読んで、ようやく終わったなという実感がわいてきました。最初こそファンタジーだと思っていたのに、最後にはすっかりSFに(笑)とくに書き下ろしは「そうくるか!」というネタだらけで、でもある意味ちゃんと広げた風呂敷を回収していて(笑)納得できて楽しく読めました。個人的に、クワンの成長した姿が絵で見れてめちゃめちゃ萌え!(笑)苦労しただけに、落ち着いた青年になってて、いい感じです。ユリウスやゼクロスも相変わらずで、すごく楽しかった。せっかく完結したことだし、6冊一気読みでもしようかな(笑)

私的評価 ☆☆☆☆
(最初は炎王ネタだけで読んでいた気もしますが(笑)炎王は最後まで炎王なまんまでしたね(笑) 壮大な作品でしたが、読みごたえはばっちり。ぜひとも一度試してみて下さい。)

 

 2004年09月10日(金)  あなたの隣に座らせて

   ビーボーイコミックス     蓮川愛:絵

MAGAZINE BE-BOYに掲載されたインテリアデザイナーとその作品に惚れ込んだ大学生とのお話と、アンソロジーに掲載された学園もののお話が収録されています。最近ずっとマガビーは買ってなかったので、全く読んだ事がなく、非常に新鮮に読む事ができました。主人公は、あるインテリアショップで見かけた椅子に一目惚れし、バイトしてお金をためたものの、タッチの差で売れてしまい、ヤケ酒をのんでいました。そこに現れた男性に絡んで迷惑をかけてしまいます。翌朝その男性の家で目が醒めた主人公。そこに一目惚れした椅子を発見して…。

あらすじを書いた作品については、3作品分あって、段階をおって2人の関係がより強くなって行くのがとても微笑ましかったです。書き下ろしでこのカップルのその後も出てきて、とってもラブラブな感じで堪能しました。世の中、事に及ぶのが最大目的、な感じの作品は多々ありますが、やはりそこに至る経過や雰囲気、気持ちもあってこそのお話と言うのを今回この作品を読んで痛感した気がする。「どうして」がちゃんと明確に書かれているだけで、とても読後感がいいです。久々に楽しんで読んだ作品でした。

私的評価 ☆☆☆☆☆
(ちょこちょこと書かれているギャグちっくなやり取りもすごく好き。「そっくりさんウイルス疑惑」には本気で大爆笑でした(笑))

 

 2004年09月03日(金)  プラクティス

   ビーボーイノベルズ  ひちわゆか:作  稲荷家房ノ介:絵

本当は8月発売だったんですが、少し予定が延びてしまいようやく発売になりました。雑誌掲載された表題作とその続編書き下ろしが収録されています。ある旅行先で出会った2人の青年のお話です。主人公は大手のコンサルティング会社に勤めるやり手の青年。仕事のため訪れた先で後輩と飲んでいたところ、帰り際になぜか靴がなくなっていることに気がつきます。しょうがなく後輩を先に宿へ戻らせてゆっくり飲んでいると、靴を間違えたらしき男性が声をかけてきて…。

雑誌掲載分だけでも十分バカップル風な(笑)2人ですが、書き下ろしではさらに倍増してバカップルかもこの2人(^^; でもひちわ先生だからかな?あまり嫌味ではなく、微笑ましくてとても読んでいて楽しかったです。どうやら続きも発売になるようですし、先月の雑誌では短編が掲載されました。その短編もかなり後が気になるものだったので、ぜひぜひ、続きを早めに(笑)読みたいなあと思います。

私的評価 ☆☆☆☆★
(イラストも素敵でした。なんだかガタイがいいというか(笑) しっかり「男性」な絵のイメージです。)

 

 2004年09月03日(金)  にゃんこ亭のレシピ

  X文庫ホワイトハート  椹野道流:作  山田ユギ:絵

椹野先生の新シリーズ登場です。普通に料理店のお話かなと思ってたんですが、実は田舎で繰り広げられるファンタジー的料理店の話だったという(笑)ちょっと本のデザインも面白くてびっくりでした。主人公はゴータと呼ばれる青年。東京の地中海料理専門店で働いていましたが、ある日父方の祖母の住む田舎から、祖母が亡くなった知らせと四十九日の法事に来て欲しい旨の手紙が舞い込んできます。同封されていた鍵をみて懐かしい思いにかられた主人公は、休みをもらって昔訪れたことがある「銀杏村」へと急ぎますが…。

椹野先生だから、なにかしら不思議なものが設定にあるとは思っていたんですが、こうくるか…(笑)と感心してしまいました。いろんな出会いもあり、とんでもない体験もありで、これからどういうふうに続いていくのかがとても興味深いです。ある意味とんでもないネタだらけなんですが、違和感がないのはどうしてだろう(笑)椹野先生ならではという不思議な空間をもった作品で、今後の彼らがとても楽しみです。

私的評価 ☆☆☆☆
(ゴータが意外といろいろ器用で笑えます(笑) 着物の仕立て直しまでできるなんて、ちょっとすごすぎるかも(笑))

 

 2004年09月01日(水)  キャットウォーク事件簿 No.2

   パレット文庫   新田一実:作  富士山ひょうた:絵

新シリーズ「キャットウォーク事件簿」2作目は、麻薬や突然死などというかなり物騒なネタの事件で幕を開けます。主人公将と悠次の悪友伊藤の主催した合コンで、他の大学の男が帰宅後死亡する事件が起こった。その後なぜか伊藤が行方不明になり、いろいろつてを辿って捜しまわる主人公たち。しかもその死因が「薬物過剰摂取」などというとんでもないもので…。

なんだか段々事件が洒落にならなくなってきたなあ(^^; 基本的に犬や猫が参加して解決して、あとは警察に任せる…みたいなパターンなので、あまり大きな事件だとかえって違和感があるんですが、今回もちょっとそんな感じ。とりあえず将と悠次が犬猫を伴って解決した部分っていうのは伊藤が関わる部分のみで、あとがどうなったかというのがわからないのが中途半端で(^^; 事件なら事件らしくちゃんと解決してくれ〜(^^; そうじゃないんだったら早く2人をくっつけてほしい(おい)だんだん欲求不満がたまってきてしまいました。

私的評価 ☆☆☆
(一応2人の恋物語と思って今も読んでるんですが(^^; なまじ最初に将が悠次に思いを寄せているという設定だったのがイカンのだろうか…。)

 

 2004年09月01日(水)  禁じられた遊戯

  リーフノベルズ   日向唯稀:作  如月弘鷹:絵

イラストが如月先生だったので、最初買う予定はなかったはずなんですが(^^; 手に取ってしまいました。読みはじめてしばらくして「…あれ?(^^;」と気がついたのですが、これ、前に出ていた「別れや本舗」の続編というか別キャラ編なんですよね。…半分読むまで気づかなかったです(^^; 主人公は別れさせ屋をしている美貌の青年。仕事依頼の合間に、久しぶりに参加した中学の同窓会で、初恋の相手である青年実業家と再会を果します。ついムードもあり、昔からの想いも手伝って一夜を共にしてしまった2人ですが…。

けっこう分厚い本で読みごたえもかなりなものです。主人公が毒舌で仕事もきっちりこなすクールビューティ受というツボにハマるキャラなので、前作よりも楽しんだかもしれません(笑)相手の青年実業家もしっかりしてるんだかしてないんだか、つかみ所がいまいちないんですが、それもツボに近い気がします。…ここのところどうもヘタレ攻祭という感じする…(笑)あとがきのあとにもちょっとだけ短編があって、それも楽しめました。

私的評価 ☆☆☆★
(リーフは発刊500冊を超えたそうです。そーいや夏にはすごい柄のバスが走ったと聞きました。…やり過ぎ…?(^^;)