2005年3月のレビュー

 

 2005年03月29日(火)  天使のじかん 1

     花音コミックス     南野ましろ:絵

ものすごーく懐かしい!(笑)約6年前に花音に掲載されていた「天使をください」の6年後を描いた作品がコミックスになりました。雑誌花音に掲載されていたものと、同人誌で出されていたものが収録されています。雑誌掲載されているのは知っていたのですが、さすがにこれのためだけに普段購入しないものを買うと言う程でもなかったので(^^;これが本当に初見です。主人公は前作であるタキ&ほたるではなく、新たに彼らの住む砂漠にやってきた不思議な一行になります。

ほのぼのちょっと動物ちっくなコメディは健在です(笑) 前よりもさらにシュ−ル度合いが増してる気はしますが、かわいらしい猫たちにとにかく魅了されてしまいました。もちろん前作のキャラも全員お目見えして、大きくなったほたるが見られて嬉しい♪新キャラの小鈴のラブリーさ加減にも本気でノックアウトされてしまいました(笑)とても楽しく読む事ができて、なんだかとても和んだ作品でした。


私的評価 ☆☆☆☆★
(6年経ってさらにパワーアップしている感じですね<砂漠>なんでも出てくるネタには大笑い。猫神のヘタレ度合いもツボです〜。)

 

 2005年03月29日(火)  いつかバウムクーヘンのできる日まで

   シャレード文庫   花川戸菖蒲:作   角田緑:絵

久しぶりな尤書堂シリーズの新刊は、結婚(?)した青山と望の結婚記念日にまつわるお話など雑誌掲載分を2編と書き下ろしが1編収録されています。すっかりラブラブな青山&望は大騒ぎの挙げ句決めた結婚記念日からもうすぐ1年。はじめての結婚記念日を祝うべく、少々頭を悩ませる青山。イベント男な望は指輪を交換したいと言い出し、青山はそれをなんとか断念させようとしますが…。

…なんだか、随分遠いところへ行ってしまいましたねえ…(^^; 気がついたらほんっとにバカップルになってました(^^; もうちょっと恋愛以外の所で大事な何かを見極めているイメージだったんだけどなあ…。最初は青山成長物語だったこの作品も、最近は望成長物語に変わってきている気がします。…とりあえず、望の過剰なラブラブっぷりはほどほどにしてもらいたい気もしつつ(なんだか恥ずかしくて正視できないんだもん(^^;)彼らが辿り着く先を、楽しみにしています。


私的評価 ☆☆☆
(外見青山中身望という最強な高校生も登場します。このいきさつがけっこう面白かったですねえ。)

 

 2005年03月26日(土)  小説家は懺悔する

   キャラ文庫   菱沢九月:作   高久尚子:絵

同じくキャラ文庫初登場の菱沢九月先生の全編書き下ろしの新刊です。主人公はビストロに勤めていた青年。実はシェフと不倫関係にあり、しかも相手の夜逃げにあってしまって無気力に日々をすごしていました。そんな彼が親友からの紹介でハウスキーパーを頼まれ、出かけた先で出会ったのは、人気小説家。住み込みで働くうちにだんだんと心惹かれていきますが…。

なんだかとっても重いテーマを抱えたお話でした。主人公2人ともが非常に重い過去を持っていて、しかもそれからは簡単に抜けだせないでいるんですよねえ。2人が惹かれあったのは、ひょっとしたらどこか同じ匂いを感じたのかもしれないなと思います。決してその重い過去がどうにかなったわけでもなく、そのトラウマは抱えたままですが、それでもそれなりに幸せに笑えるようになって、本当に良かったなあと思います。


私的評価 ☆☆☆★
(読み終えた後、なんだかちょっと魂が抜けたみたいになってしまったです(^^; テーマが予想以上に重かったのが原因かな。さすがにある意味ショックだったようです。)

 

 2005年03月26日(土)  13年目のライバル

   キャラ文庫   岩本薫:作  Lee:絵

岩本先生の初キャラ文庫です。小説キャラに掲載された表題作と続編書き下ろしが収録されています。主人公はインテリア関係を扱う商社の系列会社に勤める青年。その系列会社で照明の自社ブランドを立ち上げから関わってきた彼ですが、昨今の景気の悪さもあり、存続の危機に立たされています。そのてこ入れとしてやってきたのは親会社のエリート。しかし実はそのエリート社員とは高校時代からのくされ縁で、しかも大学時代には無理矢理抱かれたことがあるという、微妙な相手で…。

雑誌掲載から結構経っている気がしていたのですが、1年しか経ってないですね(^^; もっと前かと思ってました。ストイックで硬質なイメージの受と強引そうに見えて少々つめの甘い(笑)微妙にヘタレな攻とがけっこういいコンビで、仕事も頑張っていて好感がもてます。とくに書き下ろしは攻視点で、実はこんなにヘタレなやつだったというのが見えて(笑)逆にそんなところがツボにハマったりしておりました(笑)付き合いは長くても、恋人同士としてはまだまだ新米な彼らの微妙な距離感が微笑ましかったです。


私的評価 ☆☆☆★
(これも、ちょっと焦れったいお話かも(笑)13年も我慢する攻はとっても気が長いなあと思います。まあ、その焦れったさも含めて、楽しんで下さい。)

 

 2005年03月24日(木)  瞳の追うのは 1

     ルチルコレクション   富士山ひょうた:絵

雑誌「ルチル」に連載されている作品です。コミックス「ディア・グリーン」のシリーズで、前作の過去を描いたお話になります。前作では既に恋人になっていた二人が、お互いを意識し始める辺りの時期が舞台になっています。主人公は、喫茶店の経営を夢見て大学を中退し、バイトに明け暮れる青年矢島。高校時代からの友人音海はデザイン事務所への就職も決まり、卒業制作にも追われて忙しい日々を送っています。久しぶりに音海と会うからと、付き合っている彼女のデートを早々に切り上げたりする矢島ですが…。

何だかとってもとってもじれったいです(笑)それがこの作品の醍醐味でもあり、富士山先生の本領発揮とも言えるかも。読者側は既にカップルになっているのを知っているから、余計にぐるぐる悩む彼らにほほえましさとじれったさを感じてしまいます(笑)私は抗いがたい引力にそれでも抵抗しつつ、少しずつ距離を縮めていく彼らがすごく好きです。まだまだ続きそうですが、雑誌は購読していないので、コミックスがでるのを楽しみに待ちたいと思います。


私的評価 ☆☆☆☆
(巻末には、古いマンガも収録されています。昔から変わらない良さがあるよなあ〜としみじみ思いながら読みました。)

 

 2005年03月18日(金)  Don’t Worry Mama

   ビーボーイノベルズ   木原音瀬:作  志水ゆき:絵

雑誌掲載時に非常に物議を醸した、ある意味異色な作品です。書き下ろしでその後の二人も読むことができます。主人公はある製薬会社に勤める青年。彼は上司と一緒に無人島へ新製品になるかも知れないという草を探しに出張します。この上司、太っていてしかも役立たずで文句言いという嫌な上司の典型で、うんざりする主人公。しかし連絡の行き違いからその上司と二人きりで無人島に取り残されてしまい…。

雑誌掲載の時はとにかく設定の突飛さにびっくりだったイメージがつよくて、どなたがイラストを描かれたのかすらあまり記憶になかったりします(笑)(今確認したらかぐやま一穂先生だった(^^; よりホンモノちっくだったということ?(笑))改めて覚悟を決めて読んでみたら、自分で思っていたほどイタくもなく、木原先生の作品のなかでは一二を争うぐらい甘々な作品になっています。特に書き下ろしが本当にラブラブでびっくりなので、ぜひとも雑誌で「無理かも…」と思った人も試してみてくださいね。志水先生のイラスト効果も抜群です。

私的評価 ☆☆☆★
(さすがに雑誌掲載分での上司のイラストはないんですが、そのかわり書き下ろしでけっこうイラストが多いです。…あまりの変貌ぶりに思わず笑ってしまいました(笑)激ヤセの薬草、私も欲しいなあ…(笑))

 

 2005年03月18日(金)  委員長のキケンな放課後

    花丸文庫   真船るのあ:作   蓮川愛:絵

「俺サマな愛なんだ」シリーズの別キャラのお話になります。雑誌小説花丸に連載されたもので、風紀委員長をつとめる旧家の跡取り息子な主人公は、真面目な美人キャラ。いつもなにかしらからんでくる風俗店経営の社長子息に、姉のことで脅迫されて言う事をきかされるハメになります。その要求とは、身体を差し出せ、というとんでもないもので…。

…なんだか身も蓋もないあらすじですが、ほんとはもうちょっと可愛げがありますので念のため(笑)美人意地っ張り受とそれに微妙に振り回されるベタ惚れ攻は、まさに私のツボど真ん中で、非常に楽しんで読みました。きっかけこそどうかなとは思いますが、それでも絶対最後まではやらない攻の自制心(なけなしではありますが(^^;)は好感がもてたし、ヘタレ具合もナイスでした。久々に真船先生のこういうカップルが読めてすごく嬉しかったです(^^)

私的評価 ☆☆☆☆★
(思えば「ごはん」シリーズから始まった私の「毒舌美人意地っ張り受&ヘタレベタ惚れ攻」好み、未だに健在のようです。)

 

 2005年03月18日(金)  ナチュラリストの彼

     drapコミックス    日下孝秋:絵

雑誌「drap」に掲載された「キミに幸あれ!」シリーズの別キャラ編がコミックスになりました。表題作の他に、すっかり前作では当て馬キャラだった青野編も収録されています。オマケまんがも書き下ろしになっています。主人公は前作の攻キャラ姫路の兄宮路。穏やかで落ち着いた雰囲気の宮路は大学生で、年上の恋人がいます。この恋人、年の割に子供っぽく、でも素直になれないようで…。

ナチュラリストって、やっぱり要するに「天然ボケ」ってことでしょうか(笑)ものは言い様だなあと思いつつ(笑)基本的にギャグ路線なので、シリアスかなと思いきや落としてギャグに走る感じでしょうか(笑)個人的に私はとても宮路が好みで、彼が主人公の作品が一番嬉しかったなあ。そういえば、作中であからさまに長兄英路の顔が隠れてて、なにかあるんだろうなあ〜と思ってたら別のお話でしっかり主役でした。…しかも途中まで全然気づかなくて、びっくり。こういうびっくりは好きですが、気づかなかった自分の鈍感さにもちょっとトホホです。今回あとがきがコミックスのカバー裏になってて、ちょっと四コマもあったりして笑えました(笑)

私的評価 ☆☆☆☆
(やはり日下先生のギャグは好きだなあ〜。このシリーズは特に好みです。とりあえずこれで兄弟6人のうち4人は出てきましたが、他にも主人公になるようなキャラはいるのかな?気になるなあ。)

 

 2005年03月05日(土)  天の階 竜天女伝

  X文庫ホワイトハート  森崎朝香:作  由羅カイリ:絵

前作「雄飛の花嫁」が思わぬツボにハマり(笑)非常に楽しみにしていた新刊が発売になりました。今回は同じ中華風なお話ですが、世界観としては前作よりも遥かに後の時代で描かれています。皇帝が後継者となる男子に恵まれず、仙人の占いからある日に生まれた娘が男子を産むという事がわかり、早速該当する娘を探し出し、将来皇帝に召し上げられるという約束のもと、7年の月日がたちますが…。

今回は実に10名もの娘が出てきているせいもあり、ちょっと雑多な印象を受けてしまいます(^^; どれか1人に焦点を当ててもらった方が読む側としてはじっくり読めたのかなあと思いつつ。まあ、10名のうちの半数ぐらいしかストーリー的にはかかわりがなかったのですが、もうちょっと心理的に描いて欲しかったなあという物足りなさを感じたのは、前作がしっかり深く掘り下げたお話だったからかも。それぞれのエピソードは面白かったのですが、できたらもう少し焦点を絞って欲しかったです。せめて半分でもいいから(^^; でもそれでも作品の完成度も高く、楽しめました。シリーズとして続くのであれば、ぜひとも本当の意味での竜天女となったヒロインのその後が読みたいです。あと本の虫な彼女も(笑)

私的評価 ☆☆☆☆
(個人的には皇太子と本の虫な娘とのやりとりがすごく好き。年表のところで前作とのつながりに思わずニヤリとしてしまいました(笑))

 

 2005年03月05日(土)  風−BLOW− 9.11その朝

  X文庫ホワイトハート  柏枝真郷:作  茶屋町勝呂:絵

とうとう、発売になりました。前作からきっと次はこれだろうと思っていたので、心して購入いたしました。「硝子の街にて」シリーズの時間軸が、「9.11」を迎えてしまったその1日を描いています。主人公のノブは会社の中で、シドは移動中に、その瞬間を迎えました。そして彼らの長い長い1日が始まります。

この作品の中で、避けては通れなかったこの日を、どう描写されるのかという期待と不安が、ずっとずっとありました。シドニーには湾岸戦争の傷痕がまだ深く残っていて、だからこそ必ずこの日というのがあるものだろうとわかっていて、読みたくないような、読みたいような複雑な気持ちを持っていたので、こうして読んでそのジレンマからは解消された…のかな(^^; 読んでみて、彼らの無我夢中さに、震災の時の自分達をいつしか重ね合わせていることに気がつきました。「何もできない」という歯がゆさや奇妙な非現実さ、絶望感なんかが、妙にシンクロしてしまうんです。そしてそんな中から芽生える希望も。正直なところ読んで楽しい作品とは言い難いです。楽しい気持ちはないけど、いい加減には書かれなかったという満足感のある作品でした。

私的評価 ☆☆☆☆★
(まだ彼らの長い一日は始まったばかりです。これからますます混乱を極めていくであろう彼らの進む道が、少しでも穏やかであることを祈っています。)

 

 2005年03月01日(火)  魅惑のカジノロマンス 服従は恋のギャンブル

    パレット文庫  真船るのあ:作  蔵王大志:絵

真船先生の新作は、カジノといえばここ、という(笑)ラスベガスが舞台のお話です。主人公は負けず嫌いで無鉄砲なところのある大会社の御曹子。次男ということもあり、苦労知らずな彼は、友人に誘われて、あるカジノのVIPルームへ入ります。そこで出会ったかっこいい青年に挑発されてどんどんルーレットの賭け金を増やし、とうてい払えない程の信用貸しを受けてしまい、多額の借金を抱えるはめになりますが…。

最初は「…えげつないぐらいワガママなやつだなあ」と思っていたのですが、段々といろんな事を覚えてまともになって行く主人公が健気に思えてきました(笑)些細なことからちゃんとステップアップしていくのが好感もてます。相手の青年も、口が悪いけどちょっと不器用で、監禁ネタっぽい話ではあるけど、苦手なわりにはあまり気にならなかったです。まあ、確かに初めてはかなり強引ですが、誤解が原因ということが大きいし結果的にラブラブなので、苦手な系統ではあったけど、十分楽しむことができました。その辺りが真船先生作品だからこそなのかなと思います。

私的評価 ☆☆☆☆
(わがままでもちゃんと魅力を感じられるし、完璧な男性でも実は不器用。そういう「表面的なところ」だけじゃないものが、私のツボなのかもしれません。)

 

 2005年03月01日(火)  キャットテールレポート No.1

    パレット文庫  新田一実:作  富士山ひょうた:絵

いつのまにか次のシリーズに入っていた(笑)ききみみずきんシリーズです。細かい日常の事件に巻き込まれ解決しつつ、大学生として過ごす主人公たち。今回は化け猫(笑)タマのいぬ間にと、シェパードをつれて近場のペットOKのペンションへ出かけた2人ですが、またもや事件に巻き込まれてしまいます。その事件は「カラスが助けを求めたので行ってみたらそこにはおばあさんが遺体で見つかった」なんていうとんでもないもので…。

うううむ(^^; 100歩譲ってシェパードまではOKなんですが、なんかカラスまで行くとやり過ぎな気が…(^^; 毎回思っているんですが、今回とくに実感したのは、せっかく話のほとんどを使って謎ときや推理をしていたのに、解決方法があまりに『動物頼り』なうえ、根本的な解決になってないあたりが納得できないんだろうなあと。これだけページさいてるのに、これでお終いかい!というツッコミを毎度ラストにやってる気がする。…そしてもう、主人公2人のラブ部分については、期待するのをあきらめました…(T_T)絶対進展しないよ、きっとこのままじゃ(^^;

私的評価 ☆☆★
(わりと最初から長編書きな方とは思っていましたが、…このままじゃ終わりそうにないよ(^^; そろそろ脱落してしまいそうです(T_T))

 

 2005年03月01日(火)  終(つい)の神話・人祇(じんぎ)の章 (完)

    キャンパス文庫   霜島ケイ:作  西炯子:絵

実に28冊、11年の長きにわたって続いた「封殺鬼」シリーズの最終巻がとうとう発売されました。レーベルとしては既にないキャンパス文庫ですが、この作品だけが「キャンパス文庫」として発売されていたという、ある意味すごい作品でもあります。CD化もされ、またつい最近には別キャストでのCDシリーズも出て、まだまだ終わるには惜しいような気持ちで読みました。前作でいよいよ凶星との対決に向け、様々な準備を整えてきた弓生と聖。敵である天狗庄間一哉に捕らえられてしまい、絶体絶命の彼らですが…。

いやあ、見事に広げられた風呂敷が次々に畳まれていく(笑)様子に、ただただ納得でした。私がリアルタイムで読みはじめたのはたしか3〜4冊目ぐらいだったと思うのですが、ここまで書き続けられるとは思っていなかったというのが正直なところで、とくにこの凶星の話に入ってからは本当に長かったです。読み終えて、満足感と共に妙な達成感があったりして(笑)そして、前作までは弓生たちの死を本気で覚悟していたというのもあって、御都合主義と言われようとも、出来うる限りでのハッピーエンド(?)に、満足しています。

私的評価 ☆☆☆★
(ひょっとしたら、新書の方でまた関連のお話が出てくるかもしれないようです。「封殺鬼」としては最後かもしれませんが、また読んでみたいので、ぜひとも実現して欲しいですね。)