2005年8月のレビュー
2005年08月30日(火) 揺れる吐息に誘われて
リンクスロマンス 和泉桂:作 緒田涼歌:絵
小説リンクスに掲載された表題作とその続編書き下ろしが収録されています。主人公はコンサルタントをしている青年。彼には秘かに重いを寄せる親友がいましたが、その彼から結婚すると報告を受けてショックを受け、大雨の中を傘もささずに飛び出します。声をかけてきた見知らぬ青年とタクシーの相乗りをし、そのまま一夜を過ごしてしまいますが、じつはその青年は、親友の店に勤めるバーテンダーで…。
雑誌掲載の時はそんなにはっきり覚えてないんですが、とりあえずこの親友というキャラが許せないキャラで(^^; だからこそ余計に攻キャラがかっこ良く見えました。言葉責めキャラでしつこそうなんですが、ふとした瞬間にベタボレぐあいを露呈してて(笑)そのアンバランスさがいい感じです。主人公もぐるぐる悩むけど、きっちり一矢報いるところは報いているあたり、負けてなくていいですねえ。なんだか男前な2人のお話と言う感じでした。
私的評価 ☆☆☆★
(雑誌掲載作よりも、書き下ろしの方が腹が立ちます(笑)<親友>どこがどう良くてこいつが好きだったんだ、ほんとに(^^;)
2005年08月30日(火) 是 −ZE− 2
ディアプラスコミックス 志水ゆき:絵
不思議な能力をもつ人々とそれに関わったふつーの青年(笑)を描いたお話の2冊目になります。主人公は、天涯孤独の青年雷蔵。前作で紆余曲折あってころがりこんだお屋敷には、なんだか不思議な面々が暮しています。不思議な「言霊」という能力をもつメンバーとそのペアの「紙様」。中でもペアになる言霊をもたない「紙様」の紺に一目惚れした雷蔵は、自分が紺の言霊になると宣言し、紺に告白しますが…。
そういえば主人公は雷蔵だったんだよなあと思った(笑)2巻でした。前作後半はすっかり他のキャラたちにお株を奪われていましたが、今回はずっと主役で、しかもお初ネタ!…にもかかわらず、ヘタレキャラはやっぱりヘタレでした…(笑)失敗するわドタキャンされるわ、ヘタレわんこの名に恥じないヘタレっぷりで、すっかりシリアスモードからギャグモードに転換してしまってて(笑)大笑い。個性的なキャラに負けながらも頑張れ雷蔵(笑)
私的評価 ☆☆☆★
(どうやらCD化も決定しているようですが、個人的に櫻花が男性なのは納得いかないなあ…(^^;)
2005年08月27日(土) コーセルテルの竜術士物語 2
ゼロサムコミックス 石動あゆま:絵
ゼロサムにうつってから2冊目のコミックスが発売になりました。トータルでは5冊目…かな?毎度ながらここの出版社はノーチェックなもので、発売されてから「あっ!」と気がついて手に取ります(笑)今回は、木竜術士カディオが受けた災難と彼のもつ過去や資質のお話など、マシェルと七人の子竜たちだけでなく、コ−セルテルに住むいろんな人間たちが暖かいお話を繰り広げます。
今回ちょっと胸に来たのは、ナータのことに触れたお話かも。いろんな事を知ってあきらめている彼も、マシェルのことだけはやっぱりどこか譲れないのだなあと実感。今まではただ子竜達可愛さだけで読んでたんですが、いろいろと周りのお話も出てきて、楽しさが倍増した気がします。どうやら全員サービスの小冊子もあるらしく(笑)送るのを忘れないよう気をつけたいと思います(笑)
私的評価 ☆☆☆☆
(雑誌は買ってないんですが、やっぱり時々ふと目がいきます。…そのうち我慢し切れずに買いはじめたりして…(^^;)
2005年08月27日(土) 歯科医の憂鬱
キャラ文庫 榎田尤利:作 高久尚子:絵
一応「藤井沢商店街シリーズ」になるのかな?(^^; 小説キャラに掲載された表題作と続編書き下ろしが収録されています。前作「ゆっくり走ろう」と同じ商店街が舞台だそうですが、私は前作を読んでおらず同じキャラが出てるかどうかは不明。タイトル通り、歯科医とその患者として関わった板金屋の2代目の青年のお話です。親知らずが痛み、歯医者嫌いの板金屋の2代目はしかたなく「いい」と言われた歯医者へと赴きます。しかしそこで治療してくれたのは不愛想な上に随分こわい美人の歯科医で…。
雑誌掲載の時にけっこう好みで、楽しく読めたので、文庫も楽しみにしていた作品でした。正直他のレーベルではあまり好みと言えない作風の榎田先生ですが、今回はかなり楽しめて、その原因をつらつら考えてみたら「ハバをきかせている女性キャラがいない」ことに気がつきました(笑)そうか、この地雷がないだけで、こんなに楽しめるんじゃん…と苦笑い。主人公たちがしっかり頑張っているこういう作品なら、私はとても納得して読めるんだなと思いました。
私的評価 ☆☆☆☆
(同じ商店街シリーズで、今度は雑誌掲載もあるようです。彼らがちらりとでも出てきたら、また楽しいかも。)
2005年08月27日(土 眠れぬ夜のギムレット
キャラ文庫 遠野春日:作 沖麻実也:絵
遠野先生の初キャラ文庫は、小説キャラに掲載された表題作とその続編書き下ろしが掲載されています。建築会社に勤めるサラリーマンと、有名な建築家とのお話です。主人公は大手建築会社に勤め、課長補佐として頭角をあらわしつつある若きエリートサラリーマン。実は大財閥の御曹子で、七光りで仕事をしていると言われないよう秘かに頑張っています。そんな彼が依頼されたのは、世界的に有名な建築家の設計依頼。なんとか自分の力だけで依頼したいと思う主人公ですが…。
雑誌掲載の分も読んでいて、今回も楽しみにしていました。沖先生の華やかなイラストもぴったりで、続編はちょっかいを出すキャラがでてくるという定番ながらも、キャラがなかなか一癖ありそうなキャラだったからか、退屈しなかったです。…っていうか下手すると本編よりも読んでみたいかも、あの脇キャラの2人(^^; クールそうにみえる攻キャラが意外に情熱家だというエピソードもあって、楽しんで読むことができました。
私的評価 ☆☆☆★
(トレンチコート姿のイラストがどのイラストより一番萌えました(笑)妙なところがツボにハマっております。)
2005年08月25日(木) 甘い恋の駆け引き
アルルノベルズ 真崎ひかる:作 甲田イリヤ:絵
真崎先生の新刊は、サラリーマンもののお話です。以前に雑誌掲載されたもののようですが、記憶にあるようなないような…(^^; とくに記載はないため、どこで掲載されたのかは不明です。主人公は一流企業につとめる設計士の青年。普段はメガネをかけて目立たない格好をしていますが、気晴らしをしたい時にだけ変身して夜の街にくり出します。そんなある日、偶然知り合った男性と一夜を共にしてしまいますが、数日後なんとその男性が会社の上司…しかも同じプロジェクトを担当するとわかって…。
ぐるぐる悩むタイプの可愛いキャラな主人公と、大人ならではなずるいところもあり、少々ヘタレな(笑)エピソードもある攻といいコンビで楽しんで読みました。自信を持てない主人公がだんだんと変わっていく様子は成長記を読んでいるかのようで(笑)図らずも攻キャラの気持ちがわかってしまいます。ついついからかいたくなってしまうぐらい可愛いです(笑)まだまだ振り回されっぱなしな主人公だろうけど、そこが魅力的なのかもしれません。
私的評価 ☆☆☆★
(とくにショートストーリーとして載っている攻キャラ視点の話が笑えます。鼻のしたが伸び切ってる感じです(笑))
2005年08月16日(火) 誘惑のプロセス
ダリア文庫 坂井朱生:作 片岡ケイコ:絵
坂井先生の初ダリア文庫(ダリアレーベルでは2冊目ですが(笑))は、大学生とバイト先の社長との関係を描いたお話です。主人公は兄と2人暮しの大学生。決してからだが強い方ではない兄は、無理がたたって入院してしまいます。主人公は兄の身体はもちろん、入院費などの物入りなことも心配でバイトが上の空になりかけていましたが、以前から主人公を気に入って口説いてきていたバイト先の社長が、援助を申し出てきて…。
わりと、坂井先生の王道という感じのお話でしたね。いじっぱりでかなりぐるぐるしちゃう主人公とかまいたがりな年上の実力者(笑)という構図がまさに坂井先生の定番な気がします。そしてちょっとだけお互いに言葉が足らなくて誤解をまねくんだよねえ…(笑)なんとなく想像のつく流れながらも逆にその定番さが楽しかったです。あと、兄の真人のキャラが好きだなあ。某A山氏ほどはアクは強くないんですが、なかなかしたたかキャラのようで、彼の話も読んでみたいなあと思ってしまいました。
私的評価 ☆☆☆★
(ある意味ヘタレ攻とも言えるお話…かな?これで主人公がもっとしっかりしてたらきっと尻にしかれてる気がする(笑)今ぐらいでちょうどいいのかも。)
2005年08月10日(水) 華やかな迷宮 2
ディアプラス文庫 松岡なつき:作 よしながふみ:絵
中世フランスの王宮を舞台にしたお話の2冊目になります。主人公ガブリエルは、紆余曲折があり、「誰とも身体を重ねない」という純潔の誓いを立てていますが、実は同居人でもあるベルナールとは肉体的な関係もあり、ベルナールはガブリエルへ思いを寄せています。ガブリエルはその思いに答える事ができないままでいます。ある日、ベルナールの息子が領地からパリへとやってきて…。
ベルナールはFLESH&BLOODシリーズでもちらりと出てきた脇キャラで、その時に息子の話もありましたが、こんな小悪魔とは思いも寄らず(笑)父親を手玉にとってしまうとんでもないキャラでびっくりでした。父親の気持ち子知らずって感じですねえ。他にもベルナールを落ち込ませるような出来事ばかりあって、どうも今回ベルナールが輪をかけてヘタレになっています(笑)私はその方が面白くて好きですが、あまりにヘタレすぎてちょっと情けない気も…(笑)
私的評価 ☆☆☆★
(まだまだ続きそうな感じですが、どうやら宗教戦争にも繋がってくるようです。世界史はあまりマトモに知らないので、ちょっと勉強しようかな(^^;)
2005年08月10日(水) 情熱の甘い刺
クリスタル文庫 和泉桂:作 蓮川愛:絵
和泉先生の新刊は、サラリーマンもののお話です。主人公は、ホテルのコンサルタントを目指して日々頑張るコンサルティング会社に勤める美人の青年。ある日仕事場のエレベーターで、初対面の男にいきなり口説かれます。適当に対応していなした主人公ですが、実はその男は仕事の相手で…。
私の好きな毒舌…とまではいかないけれど、意地っ張りな美人受で、しかも蓮川先生のイラスト!とくれば、満足度も自然と高くなります。だんだんと心惹かれていく主人公は、文中にもありましたがまるで「外猫が懐いていくよう」な感じで、可愛いです。攻キャラもかなり辛い過去をもっているのですが、傲慢そうに見えてとても包容力のある優しいキャラでもあって、とても好感がもてました。和泉先生の作品の中では結構好みかもしてません。
私的評価 ☆☆☆★
(きっと、受と攻がかなり「対等」な位置にいるから好みに近いんだろうな〜というのは個人的感想。あまり攻が受に無体を働くのは好まないのでした。)
2005年08月03日(水) 翔佯の花嫁 片月放浪
X文庫ホワイトハート 森崎朝香:作 由羅カイリ:絵
デビュー作の中華風なお話がまたもやマイブームになった、森崎先生の3冊目の文庫は、デビュー作「雄飛の花嫁」のある意味続編にあたる作品です。主人公はある小国の公主である少女。幼いころ突然の戦によって母を殺されたという辛い記憶をもち、その際に出会った美しい女性に、肩に半月型の傷をつけられました。その後成長した彼女は、隣国の王のもとに嫁ぐことになりますが…。
一応、少女が嫁いだ相手の王というのが、デビュー作の2人の孫にあたるということで、デビュー作にちらりと名前も上がっていたし、さぞかし読みごたえが…と思っていたんですが、なんだか思っていた路線とは全く違う方向に行ってしまっていて、読んでビックリ、という感じでした。正直なところ、これで本当にいいの?という疑問がふつふつと…(苦笑)どうやらそう思われた方は世の中相当に多かったようなのですが、まあ、確かに全てがハッピーエンドとは行かないというのも当たり前とは思いつつ、まるで傷を舐めあっているだけのような関係の2人に、あんまり満足できなかったのも正直なところです。キャラは魅力的なのですが、魅力を感じだしたのが後半だったので(^^; 少々欲求不満になってしまう一冊でした。
私的評価 ☆☆☆
(こうして考えるとデビュー作の完成度はかなりのものだった気がします。「彼女たちの血を引いているくせに!」…と思いたいところですが、直系じゃないからムリか…(笑))
2005年08月03日(水) 悼 −SORROW−
X文庫ホワイトハート 柏枝真郷:作 茶屋町勝呂:絵
前作にてとうとう運命の9.11を迎えた「硝子の街にて」シリーズ20巻目は、「9.11その夜」という副題のとおり、アメリカ同時多発テロの夜を描いたお話になっています。世界を震撼させた同時多発テロの朝から長い長い時間が過ぎ、夜を迎えたマンハッタン。停電や火災、ビルの崩落はまだ続き、救助活動は難航します。そんな中、警察官として走り回るシドニーたちと、旅行者のケアのため奔走するノブ。スティーブを見舞うために向かった病院で久しぶりに顔をあわせた2人ですが…。
正直なところ、「楽しむ」作品というよりも共感しひたむきさを感じ取るという作品になっている気がします。読んでいてもすごくすごくしんどいです。何度も書いているのですが、すごく震災の時の経験とオーバーラップしてしまいます。でも、こうしてお話であっても書かれている事を読んで、なにかしら感じ取れたら…と思います。もちろんお話はフィクションであって、現実ではないですが、それでもまるでその場にいて垣間見ているかのような感覚を覚えます。読めば読む程に、いろいろ考えさせられる作品です。
私的評価 ☆☆☆☆
(ほんとに長い1日、そしてその後のあっというまの2週間。これから彼らの状況はいったいどうなるんだろう。全く想像がつかない状態です。)