2005年9月のレビュー

 

 2005年09月30日(金)  彩雲国物語 心は藍よりも深く

   ビーンズ文庫   雪乃紗衣:作  由羅カイリ:絵

なんと番外編を含めもう8冊目になる、人気中華風王宮ファンタジー(笑)彩雲国物語シリーズの新刊です。今回から一応「影月」編ということで、また茶州へ戻ってのネタかと思っていたのですが、ほぼ半分以上が王都でのお話でした。そして、陽月の存在や影月の過去が次々と明らかになっていく、緊迫感溢れる作品になりました。主人公秀麗は王都で茶州での案件を形にするため奔走しています。そんな最中、茶州では奇妙な病が流行りはじめます。その流行病の訪れを知ったもう1人の州牧影月は後を秀麗たちに託して奔走しますが…。

風雲急を告げるとはいいますが、あまりにいきなりシリアスなのでびっくりしました。とくに影月の過去の凄まじさにショックも覚えつつ。ここのところ「周りがなんとかしてくれて」いた感が強かった秀麗ですが、今回は頑張っています…主に口でですが(笑)彼女の原点である「なにかしなくちゃいけない時に、ちゃんとやれる存在」のまだ今回はほんのとっかかりなのだなあと。甘えない彼女の強さと、耐えられそうにないと思いながらも待って支える王様がやはりいいカップルだなあと思います。早く王都に帰ってきてくれないかなあ…(^^;

私的評価 ☆☆☆☆☆
(まだまだ影月編ははじまったばかりで(^^; これからですが、頑張っている彼女たちが楽しみです。そう言えば、11/6付の朝日新聞読書欄にも、この作品のオススメが載ってました。すごいなあ〜。)

 

 2005年09月30日(金)  いちばん外側の色

   コバルト文庫   麻生玲子:作  小山田あみ:絵

麻生先生の新シリーズは、青春まっただ中!な中学生が主人公のお話です。主人公大地はサッカー少年の中学3年生。FCにも所属していて、高校生級とも言われるぐらいの実力を身につけています。そんな彼が今一番気にしているのは、5つ上の兄である栄の友人碧。兄が高校にいる時期はかなり疎遠になっていたものの、偶然大学で出会ったとかで、また友人関係が復活しているらしく、よく遊びにやってきます。その碧は実は大地のファーストキスの相手で…。

麻生先生のコバルトのシリーズはどれも心理描写が細かくて共感しやすく、凄く好きなのですが、この新作もほのぼのしていて和みます。主人公たちが年相応な悩みや壁にぶつかっているのが等身大でいい感じ。まだ導入部分というかこれからのお話だと思うので、続きが楽しみです。

私的評価 ☆☆☆★
(一応いずれは年の差カップルになるんだろうなと思いつつ。個人的に大地の兄が好みなキャラで(兄フェチ健在だなあ(^^;))ちょっと気になっています。)

 

 2005年09月30日(金)  きみと千年廻恋 

    コバルト文庫   真船るのあ:作  二宮悦巳:絵

真船先生の新刊は、雑誌コバルトに掲載された、ちょっとファンタジックな感じの作品です。主人公は私立の全寮制男子校に通う高校一年生。両親のイギリスへの海外転勤に伴い、全寮制ということできめた高校ですが、主人公は不安を抱いていました。というのも実は彼には、妙に周りの人間に好かれるという奇妙な体質があり、なんとかして穏やかに3年間を送りたいと思っていたのですが、案の定入学一週間足らずで、生徒会長に目をつけられてしまいます。その窮地をなんとか脱した…というか、気がついたら生徒会長が他の人間に変わっていて…。

設定としては物凄くファンタジーな気がするんですが、でも学園ものです(笑) そして真船先生らしいちょっとコミカルでちょっとほろっと来てしまうような切ないところもある、真船先生ならではなお話でした。今回なにより萌えたのは、真船先生に同じく脇キャラ2人(2匹か?(^^;)もし叶うならこの2人の話も読んでみたい!と言うぐらいに萌えました(笑)

私的評価 ☆☆☆★
(イラストもとてもぴったりで、素敵です。最近中華ものネタがマイブームですが、これもそのうちに入るのかな?)

 

 2005年09月30日(金)  ムーンリット・プレシャス

   リンクスロマンス   水壬楓子:作  白砂順:絵

ムーンリットシリーズ最新作は、また今までとは別の国である悠都が舞台のお話です。主人公は第一皇子ですでに悠都の世継ぎとしてかなり政治に関わっている珀苓。無愛想で厳しい彼になぜか懐いているのは、小さい頃から悠都の王宮で暮すウサギのユキ。実はこのウサギは人間に変化することができる種族で、珀苓に持て余されつつも一途に慕い続けるユキですが…。

実は表題作は違うカップルなんですが(そのせいで裏表紙のあらすじも違ったりする(^^;)でもこっちのカップルから順に読むことになるのでまあいいか(笑) 今回はウサギになるのですが、実は兄弟ウサギで、弟は受(ユキですね)、兄は攻です(笑)しかも兄レンは目つきが悪いらしい…。ウサギなのに(笑) 残念ながらウサギ姿のイラストは一枚もなく、それが何より心残りだったりします。とくにレンは攻としてめちゃめちゃかっこいいのにウサギ!(笑) いやもうそれだけで妙なツボを押されてしまったらしく、萌えておりました。

私的評価 ☆☆☆★
(ムーンリットシリーズもまだまだ続くようです。次はエスコートシリーズとのことですが、このままだと7つの国全部に変化できる動物が現れそうですね。)

 

 2005年09月24日(土)  LOVEブロッサム・ブルーミング A GO-GO

    キャラコミックス    広川和穂:絵

広川先生の初コミックスです。キャラやキャラセレクションに掲載されたデビュー作のシリーズなどが収録されています。主人公はアパレル店の新人販売員。近所にある店と合同で飲み会をした翌日、なぜか憧れているその店の店長と同じベッドで目が覚めて…。

天然系で反応の面白いキャラが主人公なので、シリアスにならず、とてもコミカルなお話です(笑)雑誌掲載された作品も好きだったので、心待ちにしていました。時々言葉足らず(説明不足)な印象はありますが、読んでいる側が思わず気恥ずかしくなるほどの真っ直ぐな主人公が可愛い。そのまま可愛さを無くさないでいてほしいです(笑)個人的に、ちまちまと手書きで書かれているツッコミやユニークな状況表現(笑)が大好きで、カエルやザトウクジラ、ニンバス2000には大笑いでした。なんのことだ!と疑問に思われる方はぜひ読んでみて下さい。

私的評価 ☆☆☆☆
(雑誌掲載の時から注目の人だったので、こうしてまとめて読めて嬉しいです。今連載してる漫才ネタのも楽しみ〜。)

 

 2005年09月15日(木)  いつでも鼓動を感じてる

    ルチル文庫   崎谷はるひ:作  梶原にき:絵

ルチル文庫でリバイバル刊行された「いつでも瞳の中にいる」の続編にあたります。主人公は前作でとんでもないストーカー被害にあっており、そのせいもあって住んでいたマンションから一戸建てへ引越しました。恋人である探偵業を営む青年も、別に事務所を借りるようになり、平穏な日々を送っていましたが、ある頃から、その探偵事務所に美形の男が入り浸るようになります。ことあるごとにからかわれたり嫌味を言われたりでストレスが溜まりまくっていく主人公ですが…。

前作には及ばないものの、これまたハードなネタのお話でした(^^; まあ、あれだけ悲惨な体験をしている設定だと、何をどう持ってきたとしても重くはなるわな…とは思いますが。いつまでたっても「恋人」としての自分よりも「保護者」の自分と罪悪感を捨てられない元就はある意味ヘタレ攻なのかもしれません。だんだん佳弥の方がしっかりしてきちゃって(^^; どんどん尻に敷かれそうですね。

私的評価 ☆☆☆★
(前のイラストと違って、あまり色気というのが前面に来ないイラストさんなので、実は一番萌えたイラストは口絵の制服元就でした…(笑))

 

 2005年09月15日(木)  野蛮なロマンチシスト

   ルチル文庫    高岡ミズミ:作   蓮川愛:絵

高岡先生の新シリーズは、カフェが舞台のお話です。主人公は、ジャーナリストを目指していたものの、思うように行かず、先輩に誘われてミニコミ誌の記者をしています。地元で有名なカフェを取材にでかけ、尊敬するジャーナリストにばったり出くわします。そのカフェはジャーナリストの弟が切り盛りしていると知った主人公は、お近づきになりたいと翌日も出かけますが、尊敬している凄い人なはずだったそのジャーナリストは、実際はなんだかとんでもなく強引なキャラで…。

魅惑の三兄弟(笑)長兄編です。寡黙で無愛想に見えて結構お茶目なジャーナリストに振り回されまくっている主人公が可愛いやら不憫やらで(笑)楽しんで読みました。兄弟の絆の深さにもちょっと感動しつつ(笑)一番の見どころは、主人公の天然ボケ具合かもしれません。今度は次兄のカフェのマスターのお話なので、ひそかに彼が好みな私はワクワクして待っています。

私的評価 ☆☆☆☆
(次兄の話は11月発売予定。麗しいイラストも含め、楽しみです。)

 

 2005年09月14日(水)  ふんわりな幸せをどうぞ

   ダリア文庫   花川戸菖蒲:作  角田緑:絵

花川戸&角田先生コンビの新作がダリア文庫で登場です。主人公は、喫茶店を持つ夢をもち、バイト三昧の極貧生活を送る青年。ある日、少ないバイトの合間を縫ってホテルのスイーツを食べに出かけた主人公は、そのホテルで偶然高校時代の人気者だった生徒会長の先輩に出会いますが…。

うーん、私としては初期の作品みたいなのをぜひ!と期待していたんですが(^-^;やっぱり最近の作品の流れそのまま過ぎて新しい作品なのに新しさを感じられないお話でした。一生懸命で健気な受キャラだけど、あまりに攻キャラに「可愛い可愛い」と言わせ過ぎて可愛さを実感出来ない感じです。せっかく「可愛い」という設定なのに、もったいない気がします。どうも受にマニアチックな攻というのは食傷ぎみのようです。一生懸命な受がなんでもわかってる攻の手のひらでころころ転がされてて、でも最後にちゃんと受が負けてないところを見せる…って青山&望そのままじゃん…。

私的評価 ☆☆★
(イラストが角田先生だから余計に被るのかなあ(^^; 新しいものばかりがいいとは限らないけど、新作として出しているなら、それなりの違いがあって欲しかったなあと思うのです。)

 

 2005年09月12日(月)  三千世界の鴉を殺し 11

   ウィングス文庫   津守時生:作  麻々原絵里依:絵

探偵もの続きの次は麻々原先生続きに(笑)大人気シリーズの最新刊は、いよいよ戦いの火ぶたが切って落とされ、女難(笑)だった前作からあんまり進んでいない戦いの準備が今回の主なお話です。ちょうど雑誌で麻々原先生が初めてイラストを勤められたあたりからが収録されているのかな?まだまだこれから、なんだかいろんなキャラがいろんなことで脱線しまくっている気のする一冊です(笑)

新キャラのマルチは随分お気に入りキャラなのか、今までのワルターが占めていた場所がマルチにうつってしまってて、ワルタ−好きにはちょっと残念。いや、マルチも好きですが、ちょっと暑苦し…いや
いや(笑) サラもとんでもない一面を出してくるし、いやもうどうなるんだか、わけがわかりません。今回一番面白かったのはルシファの回想シーンでのO2とマリリアードの夫婦っぷりでしょうか(笑)もう、お腹を抱えて笑いましたとも。ぜひとも今後もこういう回想シーンを見たいものです。

私的評価 ☆☆☆☆
(CDの3作目も決定したようです。いろいろ楽しみが沢山あるようで、今後の展開も含め、わくわくはつきません。)

 

 2005年09月12日(月)  十三階のハーフボイルド 1

   ディアプラス文庫  ひちわゆか:作  麻々原絵里依:絵

図らずも探偵モノが続きました(笑)初出としてはなんと2001年の小説ディアプラスに掲載された作品を含め3編を加筆訂正しての収録になります。主人公は、ボロいビルの十三階に事務所を構える弱小探偵。主に今はペット関係の捜索ばかりやっている彼のもとに、一件の依頼が入ります。その依頼にやってきたのは美人のエリート警察官僚であり、実はずっと主人公が恋い焦がれてきた相手で…。

そーいや、こんな話掲載してたよな〜と思いつつ、買わなくなってからまた雑誌掲載があったんですね。知らなかった(^^; というわけで私は最初の話しか読んでいませんでしたが、なるほどひちわ先生らしいなあというお話で、しかも超ヘタレ攻!(笑)なにがって、全くといっていいほどにけんもほろろにあしらわれて、近くにさえ寄れない(笑)…というわけで、これからどうなるのか、かなりの佳境のシーンで2巻に続くという、読者には痛い終わり方で、これから2巻を焦れ焦れしながら待つのかと思うと辛いです(^^; ぜひとも早く2巻の発売があることを切に待っています。

私的評価 ☆☆☆☆
(他の本もいくつか予定が延びてしまっていますし、来月にも発売予定があるのですが、さて、この続きはいつ頃かな…(^^;)

 

 2005年09月10日(土)  世界の果てで待っていて −天使の傷痕−

   SHYノベルズ   高遠琉加:作   雪舟薫:絵

高遠先生のシャイノベルズは、探偵事務所を舞台にしたお話です。主人公は、元刑事という経歴をもつ弱小探偵事務所の青年。細々と探偵業をしていますが、元刑事ということで警察とのつながりもかなり強く、未だに昔の相棒である現職刑事の青年も出入りします。そんな彼のもとに一人の少年が依頼に訪れます。その依頼は「三年前にいなくなった双子の兄を探してくれ」というもの。最初は断ろうとした主人公ですが、元相棒の青年も、同じ少年を探していると知って…。

最後の最後まで読んで初めて、このお話が続いている事に気がつきました…(^^; というか、一応事件は収束しますが、恋愛感情の方が全く解決…どころか始まってない感じで(^^; 中途半端に期待していた分少し肩透かしかな。ただ、高遠先生らしくとても掘り下げた「しっかり」読ませてくれる作品だったこともあって、物足りないわけでは決してなかったので、読むのを躊躇された方は読んでみて下さい。ただ、恋愛に関してはあんまり進展はないです(^^;

私的評価 ☆☆☆☆
(恋愛というよりもお互いに傷を舐めあった…というより一方的に慰めた?(^^;という感じなので…。これは恋未満だよなあ、どう考えても。)

 

 2005年09月10日(土)  華麗なる落札者

  ショコラノベルズ・ハイパー  新井諒:作  円陣闇丸:絵

読む本がないなあとふらふらしていて、ついイラストにつられて手に取りました。いつもなら選ばなさそうなハイパーレーベルですが(^^; 美術品の収集をしている英国貴族と、美術館の学芸員とのお話です。主人公はある美術館で展示開催を担当している学芸員の青年。あるオークションで出会った貴族の青年が、世界有数の美術品のコレクションをしていると知り、何年もかけて準備を整え、ようやく契約にこぎ着けて英国へ渡ります。しかし当の貴族はもう断ったはずだと全く聞く耳をもってくれず…。

最初こそ、ハイパーならではな薬や道具、契約という名の枷があって強引な感じだったんですが、段々思っていたよりも人間的なところをもつ貴族を悪くは思えなくなってきて、ほだされてしまいました。受キャラも行動はちょっとどうかなと思わなくもないですが、こういう人間的な部分に惹かれたというのもわからなくはないなと、ネタ的に言うとかなりの地雷でしたが、楽しむ事ができました。

私的評価 ☆☆☆★
(ひょっとしたらイラスト効果も絶大だったかもしれない…(^^; ほんとに華麗なイラストばかりでした。)

 

 2005年09月05日(月)  鳴釜奇談

  X文庫ホワイトハート  椹野道流:作  あかま日砂紀:絵

奇談シリーズもとうとう19巻になりました。段々と天本父との戦いもリアルになってきて、佳境に入ってきたかな…という感じの奇談ワールド、今回はまたあるきっかけで体調を崩した敏生と天本の所に持ち込まれたある依頼がきっかけになります。最初は敏生の体調もあって断っていた天本ですが、早川だけでなく、妖魔の司野からの「借りをかえせ」という強い依頼もあって、しぶしぶ引き受けることになり…。

うーん、なんだかもうなんでもありですな、ほんと。というか、すっかり司野と正路が奇談ワールドの住人になっているのがそれでいいのかと納得いかないような気もしつつ(^^; 天本父もとんでもないことになっていて、どこまで広がっていくのかとなんだか不安になってしまいます。もう、終着地点が想像できなくなっていて、早く、大きな動きをもつお話になってくれればと思います。十牛図は出てきても、まだまだこれからのようです(^^;

私的評価 ☆☆☆★
(そして、ラストで願った敏生の願いにもちょっとびっくり。敏生がこんな事言うなんて!…なんだか敏生ではないみたいです(^^;)