2006年4月のレビュー

 

 2006年04月28日(金)  キャットテールレポート No.7

   パレット文庫   新田一実:作  富士山ひょうた:絵

「ペット探偵」シリーズの、なんと完結編にあたります。主人公たちも大学を卒業し、就職もしています。主人公の悠次はペット用品を扱う会社に、同居人で家主の将は叔父の経営する不動産会社に就職し、新たな生活が始まろうとしていました。そんなある日、将は会社へのクレームを受けて、タマと共に管理先のアパートに向かい、タマが異変に気が付きますが…。

急に完結編になってすごくびっくりしました。どうやらいずれパレット文庫はなくなるらしく(現在も隔月刊行に変わってしまっています)それで完結なのかな、と思わなくもないのですが、結局将の悠次への思いっていったいどうなったのか、全く進展がないまま終わってしまいました…。こんなことならそんな設定いらなかったんですけどねえ(^^; 広げた風呂敷を広げたまんまでのエンディングにはあんまり納得いかないですね(^^;

私的評価 ☆☆★
(最初から日常を描いたミステリー風味、という形なら大満足だったのに、下手にそんな設定があったから、もの足りない気持ちがずっとあったのかもしれないです。残念だなあ…。)

 

 2006年04月28日(金)  真夜中のキミに恋をささやく

   ルビー文庫   高野真名:作   桜城やや:絵

角川ルビー小説大賞受賞の新人作家さんのデビュー文庫になります。桜城先生のイラストが可愛くて、ついつい手に取りました。学園もの兼義兄弟もののお話です。主人公は大人しくてかわいらしいタイプの高校生。以前体調が悪かった際に、教師に見咎められて困っていたところを助けられて以来、クラス委員長に憧れの気持ちを持っています。母親の再婚によって、なんとそのクラス委員長と兄弟になってしまい…。

可愛い印象のキャラだったこともあって、ほのぼのしたお話でした。もちろん、教師に目をつけられてストレスで倒れたりと、波乱万丈ではあるのですが、天然キャラな主人公と、名参謀チックな(笑)委員長が意外といいコンビで楽しく読みました。個人的には親友キャラがいい味を出していて好きですねえ。次回作も楽しみにしています。

私的評価 ☆☆☆★
(新人作家さんということもあって、期待値があまり高くないので、意外にいいとすごく得した気分になります。これからもがんばって欲しいですね。)

 

 2006年04月28日(金)  微熱の引力

   リンクスロマンス  可南さらさ:作   佐々成美:絵

可南先生の全編書き下ろしのノベルズです。大学生同士のお話で、主人公はバイトをしながら大学に通う少々無愛想な青年。レポートの提出のために訪れた研究室で、同じ学年の学生が居眠りをしている教授の手に頬を寄せているのを目撃してしまいます。見られていたことを知った彼は「何でもするから黙っていてくれ」と主人公に懇願し、主人公が気が乗らないのに、まるで奴隷のように尽くしはじめますが…。

心理描写の細かさやせつなさは、可南先生らしいのですが、お話自体が、ちょっと珍しい感じですね。主人公の無愛想さ加減と、お相手キャラの自虐度合いが強いからでしょうか。嫌な感じまではいかないけど、ちょっとびっくりしました。ただ、最初は身体だけの関係だったけれど、だんだん気持ちが寄り添ってきてからはせつなさ全開で楽しむことができました。主人公側からだけではなく、お相手キャラ視点のお話もあるのでひと粒で二度美味しいです(笑)

私的評価 ☆☆☆★
(佐々さんのイラストだと、なんだか年齢差が大きく見えて、同級生という感じがしないです。受が若すぎるんだろうなあ…。)

 

 2006年04月28日(金)  御曹子と恋のレシピ

   アルルノベルズ   池戸裕子:作  祭河ななを:絵

池戸先生の新刊は、御曹子の青年の恋を描いたお話です。主人公は、大企業グループの御曹子で優秀な頭脳をもつ青年。彼の悩みは「恋をしたことがない」というもの。ロマンス文庫を教材として300冊も揃えてシュミレーションを行い、なんとかして出会いをとボディーガードを振り切って家出した主人公は、追われていると勘違いされて助けてくれた青年に胸を高鳴らせますが…。

なんて世間知らずな主人公なんだ…!(笑)ここまでくるとギャグなので笑えてしまいます。御曹子という立場にも関わらず、あまり嫌みのないキャラなので、わりと面白く感じました。お相手のワイルドなシェフも、時々ジェントルマンモードに変化したりもするし、微妙にヘタレな部分もあったりして、面白いキャラだったので、気楽に読めた作品でした。

私的評価 ☆☆☆
(天才的な頭脳をもつ主人公ですが、頭だけではダメ、ということにきちんと気がつく主人公が偉いなと思います。)

 

 2006年04月27日(木)  憶病者が夢をみる

    キャラ文庫   金丸マキ:作  明森びびか:絵

全編書き下ろしの新刊は、官能マンガ家と編集者のお話です。主人公は駆け出しの官能マンガ家の青年。青年誌に2つの連載を持っていましたが、実は彼自身はゲイで、しかも性格の問題もあってかあまり恋愛に恵まれておらず、ある日連載誌の休刊とコトの最中に振られるというとんでもなく不幸な目にあってしまった主人公。捨てる神あれば拾う神もいるらしく、大手出版社からの原稿依頼がやってきて…。

消極的な受キャラなだけに、多少イライラするところがあったのと、出てきた元カレがどうにも気に入らず、あまりすっきりしなかったです。編集者はかっこいいんですけどねえ…。好みのキャラがいないのは、読んでいてもちょっと辛いかな。2人の板挟みにあってやっと自己主張ができるようになっただけ、まだ成長してるのかなあ…?

私的評価 ☆☆★
(心理描写がわりとしっかりしているものの、やはりキャラが自分にとって魅力がないのは楽しさ半減でした…。ごめんなさい。)

 

 2006年04月27日(木)  桜姫

    キャラ文庫   水壬楓子:作  長門サイチ:絵

水壬先生の初キャラ文庫になります。なんとSF近未来もののお話です。主人公は連邦犯罪捜査局に勤務する捜査官シーナ。異星人の犯罪を取り締まるのが仕事。相棒のランディ(異星人で実は犬型(笑))と共に様々な事件を捜査しています。ある日高等判事と共に視察にあらわれた秘書官フェリシアの警護を命じられたシーナは…。

ううむ…。近未来ものは嫌いではないですが、どうも目が滑る感じで、すんなり頭に入ってこないお話でした。1つの事件は解決しているけれど、全体にナゾがあまり解決してないからでしょうか。すっきりしない読了感でした。SFだとどうしてもある程度独自の設定があるものなんですが、その説明が足りないのかもなあ…と思いつつ。一応シリーズとして続くようなので、そのあたりの物足りなさも解決していくかな?

私的評価 ☆☆★
(一番の萌えは、ランディでした。コミカルなキャラで、しかも犬型!いいキャラでした。彼の恋路ってどうなるんだろう…(笑))

 

 2006年04月22日(土)  てっぺんのひまわり 2(完)

    ダリアコミックス    富士山ひょうた:絵

「てっぺんのひまわり」の完結編になります。「わりと〜」と同じ高校で数年後が舞台になっているこの作品、前作でクラスメートの国久と共に生徒会に引きずり込まれた主人公竜平は、副会長と親しげな様子を見せる国久に複雑な思いを抱き、自分の思いを自覚します。ストレートに思いを告白する竜平ですが、国久は青天の霹靂な出来事にすっかり気が動転してしまい…。

お子様編というイメージの「てっぺん〜」ですが、少しずつ縮まっていく距離がいい感じでした。葛藤しながらも自分にとっての相手の存在価値を真剣に思う国久が真面目でいい感じです。竜平も大人になったなあ〜と思いつつ。書き下ろしは生徒会長とその下僕(おい)のお話で、この2人にもいろいろな思いや壁があって、それでもちゃんとお互いを想う気持ちがあれば乗り越えられるものなんだなと、ジンとさせてくれたお話でした。

私的評価 ☆☆☆☆
(とりあえず、バカップル化しそうな生徒会長たちはおいといて、竜平たちが穏やかに幸せそうなのが嬉しいです。…あと、ぜひとも副会長の救済措置を…!(笑))

 

 2006年04月19日(水)  傲慢な恋人

    花丸文庫    魚谷しおり:作  佐々木久美子:絵

魚谷先生のデビュー作になります。サラリーマンもののお話です。主人公は飲料メーカーの営業マン。美貌と実力を持ち合わせているため、外見だけならまるで王子様ですが、仕事に対して厳しいため、鬼と敬遠されています。そんな彼に懐いているのが、後輩のサラリーマン。厳しい態度にも恐れることなく後をついて回る彼に、出張先のホテルで告白された主人公は、ついほだされてしまい、関係をもってしまいますが…。

わりとしっかりした仕事描写があって、好感をもって読んでいたんですが、段々年下わんこ攻キャラだったのが強引になってきて「…傲慢って受のほうかと思ってたけど実はこっちなのか…?(^^;」と焦りつつ読みました。いや、最後は思ってた通りの展開になったのでホッとしましたが。美人毒舌受も好みで、大変美味しくいただきました(笑)

私的評価 ☆☆☆★
(ヘタレ攻も毒舌受も好みのど真ん中ですからねえ…(笑)我ながらある意味偏ってる気はしますが。佐々木先生の描く攻キャラがほんとにわんこキャラでツボでした。)

 

 2006年04月12日(水)  Cha-K-Ra

     アクアコミックス     青海信濃:絵

最初は買う気はなかったんですが、裏表紙のコミカルなかわいらしいイラストに惹かれて思わず買ってしまいました(笑)不思議な力をもち、修行のため旅に出た少年が主人公で、その付き添いのように、共に旅をする狼は人語を理解し、主人公のサポート役をしています。行く先々で様々なトラブルを解決しながら、だんだん霊力を身につけていく主人公ですが…。

とりあえず、天真爛漫な主人公が可愛いです。あと、コミカルな絵の時の狼がすごくツボ(笑)ストーリーはかなりハードなんですが、それでも間に入っている「クシナのひとりごと」に癒されます。コミックアクアで連載されたもので、まだ続くのかな?まだお話としては発展途上のようですが、随分主人公も成長したし楽しく読むことができました。

私的評価 ☆☆☆
(狼キャラがほんとに見事にツボに入った作品でした…。人間っぽいから余計にそう思うのかもしれません。 …あ、ちなみにこの作品まともにボーイズラブですので念のため。獣●じゃないですよ(笑))

 

 2006年04月10日(月)  甘えたがりで意地っ張り

   ディアプラス文庫   渡海奈穂:作  三池ろむこ:絵

渡海先生の初ディアプラス文庫です。小説ディアプラスに掲載された表題作と、続編書き下ろしが収録されています。学園もののお話です。主人公は高校生になったばかりの少年。ある日ノートが頭の上に大量に降って来て、落とした相手である1年先輩と仲良くなります。最初はマイペースでフレンドリーな相手に戸惑いを覚える主人公ですが、だんだん心惹かれるようになってきて…。

普通に強気で楽しいキャラと思っていた先輩が思ったよりもはるかに乙女キャラで(笑)後半はあまりの後ろ向きっぷりに主人公でなくともイライラしてしまったのは内緒です(^^; なぜにそこまで、というぐらい後ろ向きなんですが、思いきってしまえば前向きな主人公といいコンビなのかもしれません。複雑な家庭が影響しているとはいえ、もうちょっと恋人に普通に対応できないものかと…(笑)年下にさん付けってどうだろう(^^; どっちが年上か会話を読んでいるだけじゃわからないです。

私的評価 ☆☆☆
(渡海先生らしい、一風変わった学園ものという感じでした。学園ものだけど底辺には家庭環境とかの伏線がしっかりあるという…。そーいやあけぼの探検隊シリーズは商業誌にはならないのかなあ…。あれが一番好きなんですが。)

 

 2006年04月10日(月)  スイート・バケーション

   ディアプラス文庫   うえだ真由:作  金ひかる:絵

「小説ディアプラス」に掲載された表題作と続編書き下ろしが収録されています。タイトルは、本当は「スイート」の2乗なのですが、表記できないため省略です。ごめんなさい。売れっ子の小説家と世話係をすることになったプロのダイバーのお話です。主人公はインストラクターの資格をもつダイバーの青年。ダイバーだけでは生活できないため、工場で働いていたものの、その工場が潰れてしまい、知り合いの紹介で人気小説家の住み込み世話係としてアルバイトをすることになりますが…。

小説家の壮絶な修羅場に思わず笑ってしまいつつ、ちゃんと精神的な部分を描かれているのは、うえだ先生ならではだなと思います。辛い過去を暴露されてしまい、抜け殻のようになってしまった小説家を支えて、自分がもっているものはそれだけじゃないだろうと気付かせてあげた主人公の度量も大きくて素敵です。続編では犬も食わない喧嘩をしてしまう二人ですが、乗り越えたことで、また絆が強くなった気がします。

私的評価 ☆☆☆★
(ダイビングのシーンが凄く綺麗な描写で、思わず「やってみたいな」と思ったり。…いや、やりませんけどね。)

 

 2006年04月10日(月)  ポケット・センチメンタル 2

     GUSHコミックス    深瀬紅音:絵

読む本を物色しに本屋へ行って、なんだかかわいらしいミニキャラがいたのでついつい手に取りました。最初に手に取ったのが2だったので、とりあえず1もついでにお買い上げ(笑)というわけで1と一緒にレビューです。主人公は寮生活をしている純情な高校生。同級生を秘かに想っているものの、生来の押しの弱さと純情さから、どうしても行動にうつすことができないでいます。実は彼らは土地神と呼ばれるミニサイズの神様の宿主でもあって…。

えー、可愛い神様たちと、あおり(実は「ヘタレ攻」と書いてあった)についつい負けて手に取ったわけですが、2冊かけてようやく思いを通わせあって、ほのぼのした雰囲気がとても可愛い作品でした。別キャラもちょっと気になるし、少々焦れったいぐらいなんですが、でも今どき会ってすぐいたしてしまう恋愛モノが多いので、こういうのもいいなと思いました。ま、たしかに攻が乙女チックすぎる気はしますが(笑)

私的評価 ☆☆☆
(なんでもオープンな寮といい、土地神設定といい、ツッコミ所はあるけれど、なんだか和む作品でした。)

 

 2006年04月03日(月)  欲望センシビリティー

    drapコミックス    楢崎壮太:絵

最近お気に入り作家さんの1人になっている楢崎先生の新刊は学生バイトとバイト先の上司のお話です。主人公小杉は、テレビ局のテレホンアポインターのバイトをはじめました。研修もあってきつい仕事で、それでも負けず嫌いな性格を発揮して自主的に勉強もして頑張っています。普段は厳しい上司の緒方も、頑張る小杉に「よく頑張ったな」と褒め言葉をかけてくれ、なぜかその言葉にときめいてしまった小杉は…。

もともとコミカルな絵もシリアスな絵も好きなんですが、この作品は小杉くんの一生懸命さやときめき(笑)がすごくよく伝わってきて、すごく楽しんで読みました。いぢられ体質な小杉くんですが最後はちゃんとラブラブでいいなと。「イイ声」な緒方さんに翻弄されてる姿も結構好きです(笑)

私的評価 ☆☆☆☆
(…ひょっとして声フェチ健在ってことか(^^; でも、ああいう時の声の効果ってすごいものがあると思うんですが…私だけでしょうか?)